2019年11月16日土曜日

【関西リハビリ鉄2019夏】令和を走る昭和の国電! JR奈良線103系撮影記事 その5 「宇治川べりでの出会い」


■またもや宇治川べりにやってきた
JR奈良線に残されたうぐいす色の103系電車を昨年もこの夏も何度か撮りに行ったことは、すでになんども記事にしている。すっかり秋の終わりになって、平等院鳳凰堂でライトアップが行われているなどという記事を見ながら、いまこうして首都圏の自宅で夏の日々を思い返している。すると、いやだったあの蒸し暑ささえもなつかしく思えるような気がするから、時間とか記憶というのはとてもいいかげんなものなのだと思う。

もっとも、なにかに夢中になりすぎたとか、あるいは精神的なショックを受けたときでも、いちばん冷静にさせてくれるのもまた時間の流れでもある。

というわけで103系電車を撮るために、この夏にもなんども宇治を訪れた。今日の話は、前回の椿井大塚山古墳に行ったあとではなくて、桜井線(万葉まほろば線)の三輪から天理を経て櫟本で105系電車を撮りに行った日の夕方のことだ。時計の針を7月末まで戻していただきたい。

この日はすっきりしない晴れだったのと、桜井線でなかなか常磐顔の105系電車に遭遇できずにいて、いまひとつ気分がよくなかった。そこで、Twitterを見ていると103系電車が2編成とも走っているという目撃情報が上がったこともあり、奈良経由で宇治までやってきた。宇治川でなんども撮っているけれど、もう少し撮り貯めたかったからだ。

いま思うと、自分で確実に撮ることができる絵を撮って、自信を回復したかったのかもしれない。あと、サイゼリヤに行きたかったのかもしれないぜ。

■「釣ってしもた!」
けれど、結果として宇治に行ったのはよかった。どうやら私は宇治の町が好きなのだ。そして、いろいろとおもしろいできごとがあったから。

まず宇治川で水べりに降りようとすると、草むらから「うわ!」「わあ!」などとなにやら声がした。声のするほうを見ると、全長50センチくらいはあるだろうか。かなり大きいブラックバスを釣り上げた釣り人がなにやら格闘していた。そうして、目があうと彼のスマホで写真を撮ってほしいと頼まれた。

すごいですねえ! こんなに大きいのがここにいるんですね! とたずねると、釣り人氏いわく、いることは知っていたけれど、釣ったのははじめてだと。彼の口ぶりはまるで「おぼえず釣りにけり。いかがせむや(釣ってしもた。どないしよ)」という感じで、いとおかしけれ。

そうこうしているあいだにも獲物は動くので、ふたりでなんとなくあたふたしながら、彼が獲物を誇らしげにかかげるようすを撮った。ついでに私のカメラでも撮らせてもらった。たぶん、この日のいちばんの傑作はその写真だろう。

あたふたしていて、使用許可をもらい忘れたところが、私のうかつなところなのだけど。

さて、そんな楽しいできごとのあとに、城陽行き普通電車として103系NS409編成(クハ103-226、モハ102-611、モハ103-455、クハ103-225)がやってきた。EXIFを見ると18時10分とある。すっきりしない空なので手前に葉っぱを入れて空の面積を減らした。

写真の左奥、京阪宇治駅のあたりですでに複線化工事の準備がなされているのが写っている。JR宇治駅側も複線化工事の準備がなされていたし、工事が本格化するとこのアングルでの写真は撮れなくなりそうな気がする。

■「黄緑色の電車を撮りにきはったんでしょう」
さて、こんどは京都行きの列車の103系NS407編成(クハ103-216、モハ102-614、モハ103-458、クハ103-215)とその折り返しを撮るために土手に登り、宇治橋に行った。いつものように逆光でねらうために、橋の欄干にへばりつくようにして座って列車を待って矢合わせなどす。そこへ、女性が通りかかりにこにこと話しかけてくれた。その発言に私は思わず飛び上った。

「こんばんは。ねえ、黄緑色の電車を撮りにきはったんでしょう。あたし、いろいろなひとに聞いたから知ってるんですよ」

マジか。図星じゃんか。ここにいていままで何人にも「なにを撮るのか」「夕日の写真を撮っているのか」とたずねられたことがある。いつだったか、私の写真を撮っていいかと海外からきた観光客にきかれたことさえある。その彼はなつかしいミノルタX-700を使っていた。

だがしかし「黄緑色の電車を撮りにきておはするぞかし。我知れるぞ」などと目論見を一発で見抜かれたのははじめてだ。「あいつ、黄緑色の電車を撮るヲタだぜ! プークスクス」と内心で思われていたことは、もちろんあったかもしれないけどね。ともあれいづればかり多くの人がここへ103系を撮りに来けむや。

ちなみに、なぜ古文で書いたのかというのは宇治だから。たんにそれだけだ。関西方言も京都方言も、自分には知識と自信がないからググりながら書いているぜ。なにしろあずまびとだからな! そしてあずまびとは宇治川で先制攻撃を食らって動揺した。


■京阪駅側からも撮る
なんども撮っていてももういちど撮っておきたかったのは、宇治橋東詰の京阪宇治駅側(JRでいえば宇治方からではなく黄檗方)からユニチカ工場の方向を向いてのシルエット。いまのアニメにはくわしくはないから、ここがアニメの聖地だということはよくしらないけれど、それでもユニチカの煙突はフォトジェニックだ。ただし、煙突と太陽をからめるのは時期を選ばないといけない。だから、煙突は列車をいっしょに写すのはあきらめた。

NS407編成が城陽行きとして姿を現したのは19時06分ごろ。7月末ではさすがに暗くなってしまった。とはいえ「あれ射とれや者ども」という気持ちで、あいかわらず「討ち奉れ」という気持ちで、かなり興奮しながら撮った。赤い尾灯がはっきりわかるので、それなりに気に入っている。なんとなく、去りゆく列車の風情がある気がするから。






このあとはいつものように京阪宇治駅から京阪電車に乗った。日没直後に京阪電車から見る景色もなんだか愛おしくて絵にしたいのに、いつもうまくできない。近い将来に103系電車がなくなっても、宇治に行く理由が私にはまだあるともいえるね。だから宇治は、いつ行っても私には写真を撮るにはすごく楽しいところだ。観光だけの目的で行ったことはいちどもないのに。

【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. /LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH.  POWER O.I.S./LUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.S./Adobe Photoshop CC 2020