2019年12月3日火曜日

【JR武蔵野線PETIT撮影記事】2010年12月3日、豊田車両センター所属115系電車M40編成による快速『むさしの』号最終日

ハトも『むさしの』号をお見送り

■あれから9年経つわけか
日、大宮と八王子をJR武蔵野線を経由して走る『むさしの』号を記事にしてから思い出した。八トタ(豊田車両センター)所属115系電車M40編成が専属で充当される臨時列車だった快速『むさしの』号が、定期列車化されて愛称つきの各駅停車である『むさしの』号になり、使用車両が武蔵野線で用いられる205系電車などに置き換えられ、同時に京葉線方面行きの『しもうさ』号も登場したのが、2010(平成22)年12月4日のダイヤ改正からだった。

9年前のちょうどいまごろなのか、となつかしく思い、旧ブログに掲載していた115系快速「むさしの」号最終日のお名残乗車記を加筆訂正して掲載することにする。以下、日時などは掲載当時(2010年12月)のものだ。ご注意されたい。

上野東京ライン開業前だった

■会社帰りに快速『むさしの』4号に乗った
「この電車は快速『むさしの』号八王子行きです。赤羽、上野方面にはまいりません(ブチっ)」「まもなくの発車です」と、車掌が繰り返し放送を流す。

発車直前になると6両編成の列車の車内はいつも通りに座席がみな埋まり、ちらほら立席客が出始める。そこへ、発車の合図が鳴った。

いつもは乗客の9割がたがスーツを着た通勤帰りの客だ。けれど、今日は鉄道用語を散りばめて大声で会話する高校生から大学生くらいのヲタグループと、あたふたとカメラを構える大人しそうな中高生たち多数に、コンデジを通勤カバンから取り出す地味めな鉄子さん数人に、携帯を構えるスーツリーマンの隠れ鉄多数を、いつもよりもずっとたくさん乗せて、列車は出発進行!

■窓際の席を占めるとおもむろに缶ビールを開ける音がする
「JR東日本からお知らせいたします。明日からダイヤ改正により、本日ご乗車いただいている『むさしの』号も増発いたします。列車時刻や運転本数が変更になりますので、ご注意ください」車掌はそう続ける。

2010年12月3日、18時47分の定時に列車は大宮を出発した。

この日は横須賀色の豊田車両センター所属115系電車M40編成による快速『むさしの』号運転最終日だった。明日のダイヤ改正で『むさしの』号は増発されると同時に、使用車両が通常の武蔵野線色の205系に変更になる。そして、そのかわりに快速列車だったのが各駅停車になるなど、いまでも地味で目立たない電車だったのが、なおのこと地味で普通の列車になる。

この『むさしの』号はボックスシート(セミクロスシート)の電車が八王子と大宮を平日は毎日2往復し、土休日は『ホリデー快速むさしの』号と微妙に名前が変わる。とはいえ、知るひとぞ知る列車だったと言っていい。6両編成と、武蔵野線の通常の列車より編成が短いこともあるのか、いつ乗ってもわりと乗車率が高く感じられ、それなりのニーズがあるのだと思わされた。ただし、八王子と大宮を通しで乗るというよりも、八王子もしくは大宮から武蔵野線内に乗り換えなしで移動できることへのニーズが、それなりにあるということなのだろう。

私がたいてい乗っていたのは、平日の大宮発八王子行きの最終列車『むさしの』4号だった。18時47分発という時刻のために、会社帰りと思しきスーツのサラリーマンで客席が占められているのは当然だろう。けれど、おそらく乗客のみなさんはいつもこの列車に乗り、静かにこの乗車時間を楽しんでいるのだろうなと思わせられていたのが、缶ビール持参率のけっこうな高さ。

ボックスシートの車両なので、車内に乗り込む際に通勤カバンのほかに、ニューデイズやキオスクで買ったと思われる白いビニール袋を提げてみなさんが現れ、窓側に席を占めると、袋から缶ビールをおもむろに取り出して、ぶしゅっ! とプルトップを開ける音があちこちから聞こえる。おそらくは会社帰りに、家に着くまでのあいだにほんの少しだけリラックスしたい、というみなさんが乗っていたのだと思うのだ。通常のロングシートの電車では缶ビールは開けづらい。缶ビールを飲むために、この列車を選んで乗っているのではないか。だからいつも、そんな光景を見るたびに「みなさん今日もお疲れさま」という、自分もサラリーマンだったせいか、その気持ちはなんだかわかるよ、というようなほほえましい気持ちになったものだ。

もっとも、最終日はいつもよりヲタ率が高くて、缶ビール率は低いようだった。

この「快速」ロゴが「速そうな感じ」がしていいよね

■さいたま新都心駅を横目に走る
それにしてもこの列車は「快速」といいながらも速度は上がらない。停車駅がいくつか少ないだけだ。大宮を出て武蔵野線の西浦和を通過するまでは、のろのろと貨物連絡線を走る。「走っているのかな」と思わせる速度で、ときおりトンネル内で時間調整の停車を行うことも。最終日は大風で武蔵野線内のダイヤが乱れていたようで、武蔵野線の普通電車が通過するのを待った。

115系電車が誇るMT54モーターがうなり声をあげ始めたのはそんなわけで、西浦和を通過して荒川橋梁を越えるころ。12月上旬という時期では外はすっかりとっぷり暗くなり、彩湖の先に高速道路の灯りが見えるだけ。『むさしの』号の走る現代の武蔵野には牧歌的な光景はない。いつもと変わらない都市郊外の風景だ。

新秋津でさようなら

横断幕が貼ってあった

北朝霞と東所沢に停まると、そこそこの乗降がある。各駅に数人ずつカメラを持ったファンがいる。私は新秋津で降りた。新秋津で降りるひとはけっこう多い。大宮からわずか30分程度のプチ旅はこれでおしまい。「国鉄」を感じさせる列車がまたひとつ減ってしまった。さよなら、快速『むさしの』号!

土休日のホリデー快速用にM40編成はその後しばらく残されていた
【撮影データ】
Nikon D2X, D7000/AI AF Nikkor 50mm f/1.4D/RAW/Adobe Photoshop CC 2020