2022年2月16日水曜日

【秩父鉄道撮影記事】「雪のナナハチを」秩鉄7800系電車が駆ける雪の日


■秩父市内の駅まで移動した
雪が降るなかで秩父鉄道を走る列車を撮るために、正丸峠を越えた日の話の続きだ。三輪(みのわ)線で2往復ぶんの鉱石貨物列車を撮った。だが、さすがに同じ絵ばかり撮るのはあきる。そこで、武甲山の麓の駅から上り列車に乗り込んだ。

ちなみに、三輪線で7105列車と7106列車のデキ501号、麓の駅ではおそらくは7205列車(?)のデキ302号を見ていた。上り列車に揺られてどこに行こうかと考えて、秩父市内の勾配を下りたところの駅を選んだ。三輪鉱山に向けて三輪線が曲がっていくところで鉱石貨物列車ばかりを待っていたので、本線を行く旅客列車も写したくなった。

■「雪のナナハチを」
そばを走る国道140号線の交通量はそう多くはなかったが、道路を行き交う自動車の音は雪のためかあまり聞こえない。あたりはとても静かだ。

「雪の降るまちを」というむかしの歌の歌詞を、ふと思い出した。そんなときに、秩父方の勾配の上に上り列車の前照灯が見えて、列車のジョイント音が響いてきた。勾配を下りて列車は横瀬川橋梁にさしかかるあたりで減速し、ゆっくりと駅に進入する。7800系7803編成だ。我らがナナハチだと思うとうれしくなる。

「雪の降るまちを」というよりも「雪のナナハチを」というほうが、私にはふさわしいかもしれないな。



■降雪が勢いを増していく
正午ごろの秩父駅周辺では降雪はたいしたことがなく、あまり積雪もしていなかった。ところが雪は予報通りに午後から勢いを増してきた。あたりの景色がみるみるうちに白く染まっていく。

降りしきる雪のために、上り方向の奥にいつもは見える美の山公園のある蓑山、宝登山の姿、もっと距離の近い秩父太平洋セメント秩父工場(むかしでいうところの、秩父セメント第二工場)の姿どころか、横瀬川橋梁あたりにある線路両側の木立さえ雪で見えない。それにしても、ひさしぶりに見る雪景色は美しい。

だが、旅客列車は姿を現すものの、鉱石貨物列車の姿はまったく見かけない。スマホを取り出してTwitterをチェックしてみても、さきほどいた場所で撮影されていたほかの方の写真や、べつの場所で撮影された15時ごろまでの鉱石貨物列車の写真はタイムラインに流れていても、それ以降の写真が見当たらない。どうやら、15時ごろから鉱石貨物列車は運休になったのだろうと思われた。こればかりはしかたがない。


■雪の日の日没もまた美しい

鉱石貨物列車は来ない。そして、あたりが少しずつ暗くなってきた。雪は勢いを弱めない。それでも薄暮のなかを行き交う列車の姿は美しく思えて、もう少しだけそのようすを撮ってみたくなった。

日没するころに下り列車に7800系7804編成がやってきた。そのようすをむりやり写す。前照灯に降雪が照らされて、列車の姿はほとんど見えない。



だが、去り行く列車の尾灯は雪でにじみつつも、うまく写すことができた。こういう写真を撮ることができれば、この時間まで雪のなかで待っていたかいがあったというものだ。

【撮影・RAW現像・レタッチについて】
レンズの選択:三輪線で撮影したときと同様に、降雪しているような状況では主役である列車を画面内で大きく扱わないと、画面に締まりがなくなる。また、明るい時間帯に画面内の白い部分の面積が多くなることは避けたい。そういう理由で望遠レンズを使用した。300mm F4を使用するつもりだったが、開放F値がひと絞りぶん明るい180mm F2.8を用いた。

露出設定:マニュアル露出モードにして、やや露出アンダーめで撮影している。つまり「飛ばさずつぶさず」という露出に設定してRAW+JPEGで撮影し、RAW現像とレタッチをする。使用する180mmレンズが小ぶりな望遠レンズであること、手持ち撮影であり、列車が減速することを考慮してシャッター速度は1/500秒だ。

絞り値:画面内で降り積もる雪の粒の姿をめだたせたくはないが、180mm F2.8は絞り開放では色収差のせいか、いまひとつしまらない。そこで、二絞り絞ってF5.6程度で用いた。

ホワイトバランス:ホワイトバランスは5,000Kの数値入力だ。5,000Kは晴天時の設定よりやや低めの色温度だが、雪の日ではやや青みがかかることを意図した。

AF(オートフォーカス):AFモードは「コンティニュアスAFサーボ(AF-C)」で「AFエリアモード」は「ダイナミック9点」を選択し、AF追従撮影を行なっている。シャッターボタン半押しAFではなく、いわゆる「親指AF」にカメラを設定している。降雪、あるいは前照灯でAFが幻惑されて測距不能になった場合には、カメラを動かして線路でピントを合わせてから、AFオンボタンから親指を離すことでAFロックを行い、「置きピン」にして撮影を続けた。

RAW現像:ハイライトを抑えるためにハイライト部分はマイナス補正し、シャドーを見せるためにシャドー部分をプラス補正をした。そのうえで、画面全体の明るさはRAW現像ソフト上で露出量を再設定している。絵作り設定はAdobe Camera Rawの「カメラスタンダードv2」で「彩度」と「自然な彩度」はプラス10程度。雪の粒をめだたせたくはないので、明瞭度の追加や「かすみの除去」は使用していない。

レタッチの内容:画面四隅に周辺光量落ちを作っている。画面内に意図せず写り込んでしまったものをめだたせないように、レイヤーマスクを作成してその部分の彩度と明度を落とす処理を行ったカットもある。

【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW