2015年4月27日月曜日

【上毛電気鉄道撮影記事】菜の花を揺らしてデハ101が行く……そんなさまをNIKKOR-S Auto 55mm F1.2でねらう


■ハチの羽音に気を取られて
ナノハナの群生のなかにいると、周りを飛び交うハチの羽音に気を取られてしまい、少し離れた場所にある踏切の鳴る音がわからない。だが、線路が鳴り始めてようやく列車に気づいた。通常の2両編成とは違うリズムだ。そして、勾配を駆け上がるべく吊り掛け駆動を大きく響かせて、デハ101が駆けてきた。風でナノハナがさわさわと揺れる。

ここひと月ほど、カメラを借りて上毛電気鉄道(以下、上電と略)沿線を歩いていた。なかば仕事でもあり、趣味でもあるこの撮影も、4月26日(日)の大胡車庫イベントのデハ101型運行を撮影するためのロケハンでもあった。

■ハチの羽音はなにかの暗喩か
冒頭のように、身の回りをぶんぶんと飛び交う蜂の羽音に気をとられて、大切なものごとをあやうく見落としかけるというのは、よくあることだ。日常の些事や雑念に気もそぞろになると、目的を忘れかけるというメタファー(暗喩)みたいなもの。

この撮影行じたいもそうかも。大人になると、いや、生来怠惰な人間が年を重ねると、撮影に出かけてもふとした「ひらめき」を見殺しにするようにさえなる。もちろん、それは私だけなのかもしれない。この日は夕方まで、いつもならもしかしたらおっくうでやめていたひらめきに従って正解だった。

まるでハチの羽音のように、脳裏には「今日はもうやめておけば」「駅から歩くぜ」「あまり遅くまで粘ると、また前橋行き連絡バスがなくなり、晩飯がJRコンビニのNewDaysになるよ」などという怠惰な悪魔のささやきが聞こえ続けたのだ。そのささやきをふりきってひらめきを実行して、うまくいった日というわけ。

そういう日もあれば、ずっと空振りする日もある。それが、もしかしたら生きている楽しさなのかもしれない。少々大げさか。




■春は風景の変化が大きくておもしろいよね
それにしても、3月末から4月末までのひと月は季節の変化が大きく感じられて楽しかった。枯野だらけの風景がすっかり初夏の新緑につつまれ、沿線はすっかり花盛りだ。どの季節に行ってもいいけれど、上電沿線で私が楽しいのはソメイヨシノが終わって新緑のころかもしれない。田園地帯を走るように線路が敷設された名残で、沿線に緑が多く目につくからね。それと、春に行って写した写真が気に入っているからなのかも。

■NIKKOR-S Auto 55mm F1.2でも撮ってみた
ところで、Nikon Dfはニコンの現在の製品でありながら非AI方式ニッコールレンズを装着できるように、AI露出計連動レバーを可倒式にしているカメラだ。つまり、AI改造をしなくても非AI方式のレンズを露出計を連動させて使用できる。

ただし、操作には少々慣れは必要かも。露出計連動レバー跳ね上げてレンズ側で設定した絞り情報をボディ側に伝達する仕組みをオフにし、露出は絞り込み測光で行う。事前にレンズ情報を入力しておくことと、絞り値をレンズ側に設定したのちにボディ前面のサブコマンドダイヤルを回して、カメラ側でも絞り値を設定してからレリーズする必要があるからだ。使用するには少しばかり必要な手順が増える。


非AI方式レンズはさすがに私は2本しか所有していないが、そのうちDfで使用可能なNIKKOR-S Auto 55mm F1.2でも撮影したのが冒頭のカットだ。こういう状況では通常であれば被写界深度を稼ぐために絞り開放で使用することはしない。ただし、今回は意図的に開放絞りに近いF2.8で撮影している。ナノハナをできるだけぼかすことと、クラシックな描写にするためだ。F5.6よりも絞り値を大きくすると周辺部の描写も安定していまのレンズと遜色ない写りになってしまう。

NIKKOR-S Auto 55mm F1.2とDfは大きさがうまく釣り合うところはおもしろい。このときは携行したいろいろなレンズでも撮影する必要もあり、さらにはこの遊びに「はまる」のがおそろしいので数回装着しただけにとどめておいたけれど……。

それまで、私は所有はしていても古いレンズをデジタルカメラに装着することはしてこなかった。その描写を私は有意義に用いるスキルがなくて、せっかくのレンズのよさを活かすスキルが自分にはないと思っているから。それでも、こうして似合う組み合わせでは古いレンズも使いたくなる。ようやくそういうことをしてもいいボディに巡り会えたともいえるし。やばいな。

【撮影データ】
Nikon Df/NIKKOR-S Auto 55mm F1.2, Nikkor AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR, AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR/RAW