2015年6月7日日曜日

【上毛電気鉄道デハ101撮影記事】「上州の野武士」今日も活躍



■上毛電気鉄道デハ101の送り込み回送列車を待つ
勾配の下のカーブを曲がってきた電車の茶色い車体が見えた。単行運転のデハ101号は加速をつけて結構な速度で勾配をかけ登ってくる。みるみるうちに近づいてきて、画面内に想定していたベストの位置にさしかかった。シャッターボタンにかける指にわずかに力がこもる。いっきに加速したデハ101は、あっというまに目の前を通過した。画面内に見えたのはほんの一瞬のようにも思えた。

■運転体験会ツアー参加者向け臨時列車が走った
6月6日、上毛電気鉄道(以下、上電と略)では大胡電車庫にてデキ3021を用いた運転体験会ツアーが行われた。いつもの700型電車ではなく、デキ3021が運転できるそれはたいへん好評だったようだ。5月末に行われたものは受付開始後たちまち定員になったという。今回は急きょ行われた「アンコール公演」みたいなものだ。

このツアーに参加するでもない私に楽しみだったのは、ツアー参加者むけに大胡から西桐生までデハ101が往復するとあったからだ。上電のダイヤは平日も土日も同じ30分おきに走るパターンダイヤだ。大半の電車は中央前橋と西桐生を往復するが、ラッシュアワー終了後に午前中に中央前橋から大胡に入庫する列車がある。そのため、大胡から西桐生にかけてはそのパターンに空白がある。ツアー参加者を赤城で集合させ、いわば空いたスジをうまく活用して送迎用列車を走らせているというわけだ。



■土曜日でも中高生は部活があるか
さて、朝8時過ぎに前橋駅前に立って驚いたのは、土曜日だというのに制服姿の高校生諸君が大勢いること。授業があるのかと思えば、学園祭かなにかあるいは部活の試合が行われる高校があるようだ。けれど中央前橋駅は相変わらずののんびりムード。もっとも、途中駅からは高校生がたくさん乗ってきた。鉄のお仲間は……数名というところか。

私は3月末から4月末にかけて足しげく通い、枯野に桜が開花し、あちこちの木々が芽吹き新緑をまとい、そして菜の花が咲くのを今年は見てきた。ひと月ぶりの沿線のあちらこちらでは、田畑が起こされて水田に水が張られている。私が少し驚いたのは、線路から見える場所は稲作よりも麦を作る畑が多いこと。

そんな気まぐれなたまさかの通過者(私のこと)を乗せた700型電車は西桐生に向けて走る。数名の鉄のお仲間が水鏡を狙い沿線にいるのが見えたけれど、総じて沿線は穏やかだ。前夜の雨に洗われて空は青いが、赤城山には厚い雲がかかっているので、午後の天気はいささか怪しい。 

■6月の沿線には花はないけれど
さて、大胡ではデハ101が赤城でツアー参加者を迎えるべく、出発準備をしていた。3月末の運転体験会のときにも感じたけれど、沿線の鉄のお仲間の出動数の少なさを見ると、今日はほんとうにデハ101が走るのか不安になっていたのが、これでひと安心だ。ともあれ、狙った場所に先客がいないか気にしながら先行する列車に揺られていると……狙っていた場所の数百メートル前に先客がいただけ。

駅を降りて早足で撮影地に行ってみると、前方にいる先客は隠せそうだ。よしよし。あとは太陽が翳らないことを祈るぞ。 

それにしても、あれほど咲き誇って沿線を明るい黄色に染めていた菜の花はすっかり枯れている。5月から6月は実は花が減る時期でもある。紫陽花には少し早い。淡く明るかった緑も日増しに濃くなる。梅雨入りも近いな……などとぼんやり考えている間もなく、中央前橋行き列車が過ぎてすぐに、デハ101は現れた。前回のイベントのときにも思っていたけれど、通常ダイヤの隙間に走るからか、デハ101はなかなかの早足だ。そして、甲高いモーター音を響かせる。そしてぴかぴかに磨きあげられた姿はじつに美しい。

夢中でレリーズしてから、なにかがいつもの姿とはことなっていたように思い、画像を再生してみると、ヘッドマークとサボがなくて「素」の姿だった。それはそれで、さっぱりしていてまあいいか。


【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW