2018年9月11日火曜日

【2018年夏関西リハビリ鉄記事】桜井線・和歌山線国鉄型電車乗り&撮り記 その1.「カメラのおっちゃん、おおいに迷う」

柏原でまず上り201系電車に再会

■国鉄型電車撮影作戦発動
在阪期間中の私の目標のひとつは、奈良線を走るなつかしいうぐいす色の103系電車に乗り、撮ることだとはすでに書いた。同時に、もうひとつの国鉄型電車として、奈良〜高田の桜井線(万葉まほろば線)と王寺〜高田〜和歌山を結ぶ和歌山線を走る105系電車も来春より置き換えられるむねがJR西日本より公表されていることもあり、やはり乗って撮っておきたい。つまり、私にとって最大の目標は奈良県北部の訪問だったということ。

先日書いた、宇治で奈良線の電車を撮影した日は時系列順に書けば、じつは何度めかの「奈良県北部撮影作戦」だった。その1週間ほど前に桜井線と和歌山線にすでに乗っているからだ。今回はその日のことを書こう。

大和川沿いを走る201系電車の車内

■ぷいーんという音を立てて走る201系電車に再会して
滞在していた松原市の病院から奈良へ出るには、前述のようにいくつかのルートがあった。スマホで経路検索をかけると、もっとも早いのは近鉄南大阪線で都心の阿倍野橋に出て、JR天王寺から関西本線の「大和路快速」に乗ることとある。それは理解していても、いちど都心に出るというのはなんとなく遠回りしている気がする。そこで、ふだんもっぱら使っていたのは近鉄南大阪線でできるだけ奈良に近づくこと。そこでまず試したのは、道明寺まで行って近鉄道明寺線に乗り換えて、大和川を渡って対岸の柏原まで出て、関西本線に乗り換えるという方法だった。関西本線を利用するにしても「大和路快速」は柏原を通過してしまうので、柏原から奈良へは各駅停車に乗る。このルートの利点は、関西本線で各駅停車に充てられている201系電車に乗ることができること。首都圏では中央快速線や京葉線から引退した2010年秋にテツが大騒ぎしたあの電車が、関西本線ではまだまだ元気に走っている。

ただし、このルートは近鉄道明寺線の本数の少なさと、関西本線との接続のよくなさに引っ張られて、時間がかかることがある。この日も柏原で通過列車を数本見送っている。


王寺で乗り換え

いいかげん待つのにも飽きたなあ、というころに王寺行きの201系電車がやってきたので乗り込んだ。側面は思い切り改造されていて、なんだかソウルメトロの電車のようだ。けれど、走り始めると床下からはなつかしいぷいーんという感じで鳴る電機子チョッパの制御音がする。数年前までめずらしくもなかった電車にこうして乗り込んで、聞き慣れた音を聞いているとなんとなく……幽霊に会ったかのようなみょうな気持ちになる。うれしいといえばうれしい。それは事実だ。なにしろ、わざわざ乗りに来たのだから。けれど、同時に不思議な気持ちもどうしても拭えなかったというのもほんとうだ。

うーん、わかるかなあ。終わってしまった恋愛をふたたび始めるような気持ちというのか……カメラのおっちゃん、またへんなこと言わはって……いちど別れてしまい、すでに自分も忘れかけていた相手に、もういちど出会ってしまったかのような気持ちというのかな。この気持ちは、これ以降どういうわけか奈良線や和歌山線でほかの電車に乗っているときにもつきまとった。相手が電車だからまあいいんだけど(苦笑)。

あれは! 117系電車ではないか

■曇りの日は「乗り遊び」にすればよけいなモヤモヤはしない、はずが
そんな妙なことを考えてしまったのは、当日がすっきりしない曇りの日だったからか。夕方18時までに松原市内に戻らねばならないとなると、日没後に撮ることができない。しかも、今回の入院時に持参した交換レンズは広角30mm相当と中望遠85mm相当の2本だけだ、というのはパナソニックのLUMIX GX7 Mark IIしか持っていかなかったからだ。一眼レフを持っていけばもっと望遠のレンズもあるから、どんな場所でもより絵にしやすい、というよりも絵にできる自信がある。今回は荷物を軽くしたかったという理由以外にも、この2本だけで工夫して撮ってみようという思いがあった。つまり、望遠レンズで画面内を整理するのではなく、自分の知恵と足で画面を整理しなければならないということ。

そうなると、時間的に日没を利用できないなら、曇りの空の日の日中に鉄道を被写体として私が撮ることができるのは、記録写真と列車を主役としないスナップショットくらいだ。そのせいか、「列車をガンガン撮るでえ!」というアゲアゲなテンションではなかった。

でもね、仕事の撮影ではないので、そういうときはロケハン(撮影の下見)のつもりで、「列車乗り遊び」でもしているほうが、モヤモヤしないでいい。でも撮影以外のことを考えて、べつのモヤモヤはあるみたいやな、カメラのおっちゃんには!←うるせー。

ゴホン(咳払い)。とにかく、当日の話に戻る。王寺に着く頃にきょろきょろと見回してみて、私は驚いたのだった。駅前に西友があることと、かつて京阪神でゴージャスな新快速として用いられていた117系電車が留置されていることに。不勉強で「関西圏電車超ライトユーザー」である私は、和歌山口に117系電車が配置されていることは知識として知っていても、王寺まで走ってきていることを知らなかったからだ。えー、すみません。奈良と和歌山の位置関係と和歌山線のことをようは知らなかったということです。カミングアウトしちゃった。

奈良でなつかしい105系電車に出会えた(後日の撮影です)

■奈良から高田経由で王寺に戻るルートに乗って
そうして、奈良からは桜井線の105系電車に乗ってみた。1986年頃に宇治橋で目撃して以来だから、えーと32年ぶりの出会いか(歳がばれますな)。この電車はもともと、常磐線から営団地下鉄(当時)千代田線への直通用に作られて用いられていた。子どもの頃に地下鉄千代田線に乗る際にこの電車がやってくると、斬新なデザインでカッコいい営団地下鉄の電車に比べて、走行音がやかましくすでにオンボロに思えた電車が、こうしていまだまほろばの地を走っているとは。

帯解のこのシーナリーも気になるなり

電車は奈良を出発した。高架線を降りて京終(きょうばて)、帯解(おびとけ)、櫟本(いちのもと)と難読駅として有名な駅を過ぎていく。乗ってみて気づいたのは、まず桜井線沿線は都市近郊を走る路線で、駅間まで歩かないと開けている場所が思っていたよりもずっと少ないということ。私が好きな秩父鉄道や上信電鉄にも似ている。駅名や地名はずっと歴史のロマンを感じさせるのだけど……思えばあたりの宅地化が進んでいるのは当たり前か。だって、奈良には平城京の頃から人が住んでいるのだもの。えーと、1300年前でしたっけ……遠い目をしようにも数えきれないぞ。とにかく、ただの記念写真や記録写真にしないように、カッコよく列車を撮るには、いったいどうやって撮ろうと考えこまされた。

きっと103系時代から残されているはず

扇風機が回っていてもあまり涼しくないなあ

天理にて交換。奥に京都地区の117系がいるのは天理教関係の臨時列車か

それともうひとつ、わりと切実な悩みも生じた。それは、この電車は冷房の効きがとても悪いのだ。盆地だから暑いとされている奈良盆地を走るにしては、冷房が効いていない。走り始めたらむしろ、窓を開けるほうが涼しいのではないか。好きで乗りに来たはずのこの私が暑さに参り、近鉄電車に接続する天理や桜井、あるいは畝傍で乗り換えてしまおうかとなんども迷ったほど。

高田で乗り換え

パンダ顔も幌があるほうが締まって見えていい

戸袋窓があるほうがいいなあ

新潟県上越市の「高田駅」はいまやJRの駅ではないんだった

そうして、高田まで乗り、高田からは難波行きの電車に乗り換えて王寺に戻った。王寺からはまた各駅停車に乗って柏原と道明寺で乗り換えるつもりで。そのとき、王寺には行きに見たと思しき117系電車が五条行き列車として停まっていた。「関西圏電車超ライトユーザー」の私は、この117系電車に乗ったことがないので、おおいに興味をひかれた。この電車もまた乗って撮ってみたい、と。

そうしてとりあえず、今回は行きと同じルートで戻ることにして、帰路にいろいろと考えた。桜井線・和歌山線は研究して望まないと私には撮りづらいぞ、と。いや、これはじっくり研究してなんとかものにする価値がある。ほら、高嶺の花とか人気のあるひとを好きになる、不幸な恋愛みたいなもので……←カメラのおっちゃん、いっつもそればっかや!


王寺に戻ると117系電車の五条行き列車がいた(後日の撮影)

「普通」という種別でもイタリックで速そう


【撮影データ】
Panasonic LUMIX DMC-GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH. LUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH. / POWER O.I.S./Adobe Photoshop CC 2018