2020年7月17日金曜日

【JR関西本線201系電車2019年7月】柏原駅の雨の夜


■ちょうど一年前の話
2019年7月中旬のある夜、JR関西本線(大和路線)のJR難波行き各駅停車に王寺で乗ろうとしたら、強い雨が降っていた。梅雨から夏にかけてこの区間に乗ったことしかないためか、高い頻度で強い降雨にあうことが私は多い。そのせいか、乗っているといつも雨のことを考えてしまう。


この日は、当時まだ和歌山線と桜井線(万葉まほろば線)を105系電車が走っていたので、松原市の滞在先から近鉄南大阪線と近鉄御所線を乗り継いで御所(ごせ)に行き、それからふたたび近鉄を乗り継いで畝傍(うねび)に出て、さらに桜井線の櫟本(いちのもと)にも行って、一日中105系電車を撮っていた。その帰りに奈良から大和路快速で王寺に出て、各駅停車しか停車しない柏原(かしわら)で近鉄道明寺線に乗り換えるつもりだった。

■亀の瀬は大和川の難所
すでに暗くて車外は見えなかったけれど、きっと大和川も増水しているのだろうと想像していた。王寺から柏原にかけては、途中に亀の瀬という大和川の難所があるのを知っているからだ。

いまの河内堅上から三郷方の少し上流にあるこの亀の瀬というのは生駒山地と金剛山地の両端に挟まれた狭い谷になっているので、地形の関係から増水しやすいそうだ。さらに地質のせいで地盤が脆弱なのだそうで、過去に何度も地滑り被害も発生しているという。関西本線のルートも1931年(昭和6年)の地滑りで亀の瀬隧道内に亀裂が発生したため運行をとりやめ、結局は大和川の北岸を通っていた開業時のものから、大和川を二度渡って南岸を走る現在のルートに変更されたと聞く。

奈良盆地自体が構造上周囲の山からの水が集まりやすいのだろう。大和川が亀の瀬を経て大阪平野に向かうのに、その少し上流に位置する王寺のあたりからは大和川の両岸に山地が迫っていて、水量が増えると亀の瀬がボトルネックになるようだ。昭和57年(1982年)豪雨による大和川の氾濫で田原本町で堤防が決壊し王寺駅周辺が冠水した(リンク先はPDFファイル。当時の王寺駅駅長の話が掲載されている)ことは当時の報道で覚えている。終電後に王寺駅構内の電留線が水没して、101系電車が大量に冠水して電気系統と床材がだめになり、関東で廃車予定だった車両が応援として関西本線に転用された。

そのさい、うぐいす色で正面に黄色い警戒色の塗装を変更するまもなかったために、転属当初はオレンジバーミリオンやカナリアイエローの101系電車がまじって走っていた。ヲタだから自分の目で見ていなくても、そういう当時の記事はよく覚えているのだ。王寺で初めて降りたときに駅周辺を見回してみて、なるほど川もすぐ近くで高低差も少なく、これは川が氾濫したらああなる危険性はたしかにあるだろうなと素人ながらに思った。

そういう難所だけあり、沿線風景を見ているぶんには山のなかを走る雰囲気がよく見える。そのうち下車して列車を撮ってみたいと思いつつまだ果たせたことがない。103系電車が走っているあいだに乗ったり撮ってみたかった。そのころは訪問できなかったのだからしかたがない。 

ありがたいことに、この日は列車は順調に走って柏原についた。私は安堵して道明寺線に乗り換えるべく下車して列車を待った。新幹線から見える有名な看板の一つであるかの727cosmetics本社工場のある柏原ですよ。以前、道明寺線を撮ろうとしてみつけてから忘れないようにしているあれ。


■いつも柏原で列車を見ていた
柏原は大和路快速の通過駅であり、各駅停車が退避することがあるので比較的長い時間停車している。退避する時間と、道明寺線の運転本数とのかねあいもあって、柏原で乗り換えをするたびに行き交う関西本線の列車を眺めている時間がいやおうなく生じる。

まあそれもまたいいかなあ。しかたがないなと思っているとそれなりに楽しめる。JR西日本のプラットホームにあるベンチは進行方向を向いて線路と直角に配置されているのか、などということを観察したり。通過線を走ってきて高速で通過する221系電車のカッコよさにびりびりとしびれるし。東京首都圏ではずいぶん前に姿を消した201系電車の「プイーン」という電機子チョッパ装置の磁励音を耳にして「そういえばこういう音がしたっけ」などと考えているあいだに、道明寺線の列車が来るから。

どうしても退屈なら駅前にあるアゼリア柏原までペデストリアンデッキもつながっているから、1階のスーパーマーケット「サンプラザ」のベーカリーコーナーでパンを買うのもいいよ。




■雨の中を走る201系電車にグッとくる
夜の電車の姿を見るのが私はもともと大好きだ。この日はしかもけっこう強い雨で、ヘッドライトの明かりに雨粒が照らされて肉眼でも見える。JR西日本の201系電車はヘッドライトがガラス内にあるのか、などということを遅まきながら知る。私はほんとうにテツなのだろうか。夜の降雨とは運行に携わるみなさんは神経を使ってたいへんだろうけれど、たんに見ているだけの私には「かっこいいなあ」と思わせる条件がふたつも重なって「いまこれを撮らないでどうする俺」という気持ちに。レンズ交換式のカメラボディを2台も持って出かけた撮影行の帰り道なのだ。なるだろ、そりゃ。

この日はしかも、駅周辺で祭りが行われていた。「2019年柏原地区夏祭り」という名前のものだと思われる。山車が出ていて、道明寺線のプラットホームからもその姿が見えた。雨の中で山車を動かすようすが目の前に展開されていて、列車を待つみなさんもスマートフォンを向けている。お祭りの雰囲気が好きなヲタの私にも「柏原電車祭り」のようで、じつにうれしくなった。時間があれば降りてみたかった。201系電車も真面目に撮っておきたいと思いつつ、ほかの被写体ばかり追っていてなかなか撮りためることができていない。


【撮影データ】
Panasonic LUMIX GX7 Mark II/LUMIX G 42.5mm F1.7 ASPH. POWER O.I.S./RAW/Adobe Photoshop CC 2020