2021年12月13日月曜日

【八高線撮影記事】209系3100番代「ハエ72編成」が走った最後の秋の日々 その1 入間川橋梁にて


■11月に走っていたことに驚かされた
以前のエントリーでも記したように、八高線・川越線では2022年のダイヤ改正で列車のワンマン運転化がなされるらしく、昨年から川越車両センター(宮ハエ)に所属する209系電車3500番代車とE231系電車3000番代車に、監視カメラの設置などのワンマン運転対応改造が進められていた。この工事は2021年10月中に完了したようだ。

この改造工事は大宮総合車両センターで行われていた。だが、工事のために工場へ入場すると営業運転に使用可能な編成の所定数が減ってしまう。E231系3000番代と209系3500番代の導入時にいちど運用離脱したかに思われていた、209系電車3100番代のハエ71編成およびハエ72編成が、自身にはワンマン運転対応改造はなされないまま予備車として残されていたのは、このワンマン運転化工事のために予備車を確保するためだったようだ。

もっとも、車両の改造工事が済んだだけではワンマン運転への準備が完了したことにはならない。そこで、改造済みの車両の試運転と乗務員の習熟訓練がしばらく行われている。線路沿いにいると、時刻表にない時間に「試運転」の表示をした車両が走ってくるので、そのようすは理解できた。

いずれも、労組各支部の機関紙などから得た情報からの類推だった。だから、乗務員習熟訓練がいつまで行われるかも類推するほかない。

私自身は7月中に209系3100番代を写して、それなりに満足して失念しているあいだに11月を迎えてしまい、「改造工事が10月に完了すると報じられていたから、11月にはもう運用離脱してしまったかもしれないなあ」と考えて、秋の撮影はあきらめていた。

11月上旬にすでにハエ71編成が「休車」札を出して運用離脱しているという目撃情報がTwitterで流れた。だが、いつも行く入間川橋梁に出かけて見ると、ハエ72編成だけは走る姿を確認できた。これは正直にいうと、予期していなかったおどろきとうれしさがあった。だから、11月中にはこのハエ72編成を追いかけることに決めて、タイミングが合い、天候のましな日にできるだけ八高線沿線を訪ねていた。

目撃情報や運用予想をアップしてくださるツイッタラーのみなさん、ありがとうありがとう!

■願うような空模様にはなかなかならず
11月には台風シーズンが去って秋になり、比較的天候が安定した日が続いていた。ところが、午前中から午後早くには青空が広がっていても、午後遅くから日没にかけて雲が出る日が多く、私が沿線でもっとも好きな入間川橋梁で「紅葉している日に夕方の斜光線を木々やススキが浴びてきらきらと輝くように見えて、そこを走る列車の姿」という、撮りたいと思い描く姿になかなかならない。色づく木々やススキはベタ順光で見ても美しくない、と私はやっぱり思うから。

何日間も天気予報アプリで天気をチェックしては「今日はいい感じになるかもしれない」と線路の下流側の橋の歩道に行き、そこで待ち構えていた。そこはたくさんの通行人が通る場所だ。

下校中の小・中学生には目があったらこちらからあいさつをし、その流れで目があった女子高校生にもあいさつをしたら、あいさつを返してくれた子が友人たちに「いまのひと知り合いなの」とたずねられているのが聞こえて「ちゃうちゃう。目え合ったさかいに、おっちゃんがあいさつしただけや」と心のなかだけで勝手に偽関西弁で返事をするとか、「いま山のなかで****を見かけてスマホで撮ったんだよ!」と声をかけてきた散歩中の地元の方に写真を見せられておどろいたり。保護動物なので伏せ字だ。ご賢察ください。

そんなことをしているあいだにどんどんと雲が出て、太陽を隠してしまうことが多かった。5回以上は同じ場所に通ったので、飯能市立加治東小学校や同加治中学校、埼玉県立飯能南高校の生徒諸君のあいだに「あの『カメラのおっさん』が今日も橋にいたよな」「あいついつもいるっぽくねー」などといわれているのではないかと心配した。いわれるだけならいいんだけど。

こういうご時世では自分は「カメラを持った不審者」と思われがちであることは自覚をしているので、撮影中には通行人にはできるだけにこやかにあいさつをするようにしているのだ。「そんなには怪しい者ではありませんよ」という表明だ。私は地元の人間ではないからね。



■順光でも撮った
そんなわけで、冒頭のカットを撮るまでに5回くらいは通ったはずだ。そこでようやく自分にとっての「最低ライン」をクリアできた。さいわいなことに、それ以降も11月中のそのころはハエ72編成は運用入りしていることがあったので、もっとほかのパターンの写真を撮ることも試みた。いくら好きな場所でも、もう5年以上断続的に通って逆光の日没のようすばかり撮っているのでは、さすがに写真が類型的になりすぎる。だから、今シーズンは日没後には流し撮りをして、写真に多少は変化をつけようと試みた。同じパターンの写真ばかり並べると見ているほうは飽きる。

そこで、午前中だけ走って拝島や八王子、川越に入庫してしまう日の朝に順光のシーンもねらった。そして、早めに引き上げてからは川沿いで列車とは関係のない「写真紅葉狩り」を楽しんだ。こういう撮影の合間に主目的ではなくても気になるあれこれを写しておくことは、写真撮影技術と視点のトレーニングにもなるから。





■乗りもしておいた
さらに、ハエ72編成を夕方の日没後に撮影できてもまだ走り続ける運用の日には、入間川橋梁から東飯能まで歩いて八王子や川越から戻ってくる列車に乗った。八王子や川越に去ってから戻ってくるまでにだいたい1時間程度かかるので、入間川橋梁から東飯能まで歩くと焦ることなく駅にたどり着くような、ちょうどいい時間になる。以前も記したけれど、金子まで歩くのは加治丘陵越えがあるのと殺風景すぎていろいろあれなので。とくに夜は金子まで埼玉県道218号二本木飯能線を入間川から歩くのはちょっと……。霊園もあるしさー。



ハエ72編成に乗ってみるとやはり、「少しまえの古い電車」という印象を与えるのはほんとうに興味深い。長く残すことが意図されず、補修工事や改装工事もされないでいるために、あちこちに痛みがあるようすが目につく。車両故障も多くなっていると労組機関紙にあった。




「いつまで走るのか想像はつかないが、いまのうちにあれこれと撮っておこう」と考えて撮っていたのは正解だったようで、ハエ72編成は12月4日以降、本稿執筆時点では運用入りしていない。だから、11月中の運用入りは「めぐる季節のなかで」「キミに出会えた奇跡」などとJ-popでよくありそうなポエムを書きたくなるくらいの貴重な撮影機会だったのだと思う。

そこへ、2021年12月10日づけのJR東日本大宮支社のプレスリリース(リンク先はPDFファイル)で、209系3100番代を利用したツアーが行われるむねが告知されて、そこではじめて公式に209系3100番代の引退が公表された。そうなのだろうなあ……と想像していたのでおどろきはしないが、昨今流行りの予約制有料ツアーに209系3100番代が登場することには,少しだけおどろかされた、かな。

人流抑制と制御が可能で、確実に課金できることを考えれば、こうした予約制有料ツアーを鉄道会社が行いたい気持ちはわかる。ただし、そのネタにどちらかというとマイナーで、「元東京臨海高速鉄道70-000形」という「買収国電」のような車両がJR開催のツアーに登場するのはなんだか興味深い。へんなことをおもしろがっているかなあ。

しかも、ハエ71と72の両方とも川崎重工業(当時 現川崎車両)製で、いっぽう20メートル4扉の通勤形電車の元祖である63形電車のうち、余剰航空ジュラルミンを利用して車体が作られた車両も川崎車輛(当時)で製造されている。ハエ71と72は第三セクター鉄道からJRが買い取ったいわば「平成の買収国電」であるうえに、川崎重工業製のステンレス車体(鋼鉄製ではない)電車だ。そして、当時のジュラルミン製車体の63形電車は耐久性に劣り長くは活躍しなかった。そういう故事をかんがみるならば「走ルンです」などと一部で悪口をいわれた209系電車0番台とその同型である東京臨海高速鉄道70-000形、その改造車209系3100番代は「ロクサン形ジュラ電の正統なる後継者」なのでは。「ジュラ電」に「買収国電」だなんて、フォカヌポウ、デュフフコポオ(ヲタにしか通じない妄想につき以下略)。

(以下引用)
「JR東日本大宮支社では、新たな『コト商品』として、2021年度中に運行を終了する予定の 209系3100代列車に乗って、撮って、触れて、楽しむ体験ツアー『ありがとう! 川越・八高線で愛されてきた 209系3100代』を開催いたします」
(引用終わり)

上記の有料の予約制ツアーは2022年1月8日と9日に行われるそうだ。少なくともこの2日間は川越と川越車両センターのあいだだけは走ることも予想できる。それ以外に「2021年度内」にまだ209系3100番代が走ることがあるのかどうかは、私にはもちろんわからない。乗務員習熟試運転のあいだの予備車として、走る機会があればもしかしてあればいいかもね、というところだろう。可能ならばもう少し撮影できればとは、もちろん私も思う。

【撮影データ】
NikonDf, NikonD7200, iPhone 7Plus/AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED/RAW/Adobe Photoshop CC