2024年10月4日金曜日

【秩父鉄道撮影記事】鉱石貨物列車臨時運休の日に5000系を追いかけて(その2)

5002編成のサイドをギラリ!

■「東武鉄道×秩父鉄道 SAITAMAプラチナルート乗車券」を使いまくる
渓谷と山の上にかつてあったかんぽの宿(現 亀の井ホテル)最寄り駅で5003編成を撮って、やる気が出た。こんどはさきほど下り方向へ走っていった5002編成を、どこかで撮ろうと考えた。だが、同じ場所で撮るのもつまらない。

汗だくになるほどの暑さだ。亀の井ホテルの温泉も日帰り入浴ができるそうだ。着替えを持ってきて日帰り入浴してもよかったなあ。持ってこなかったのだからしかたがない。

そこで、関越インター近くにできたアウトレットモールの最寄り駅まで向かった。ねんのために記すが、着替えを買うためではなく撮影のため。「東武鉄道×秩父鉄道 SAITAMAプラチナルート乗車券」で上り方向に行けるもっとも端の駅だ。

ところが、思い描いていた場所は線路の枯れた雑草が多く、ヒガンバナは列車と組み合わせづらい。それでもいいやと思って5002列車を待ったところ、36列車で三峰口から戻ってきたのはねらい通りだったのに、レリーズをミスった。

「はああ!? マジで意味わかんないんですけど!」と字面だけ見るとギャルの怒り方のような台詞を吐いた。心のなかにギャルがいるのか私は。一人称を「あーし」にすべきか。漫画とアニメでしかそんなギャルを見たことはないが。

黙って見せればそれなりの写真にはなった。そこは抜かりはないぜ。

■有名撮影地でヒガンバナをねらう

上り方を見ると奥は咲いていない(画面奥の踏切のそばは咲いている)

下り方は花も多い。明日以降は枯れるだろう

いまの時期の太陽の当たり方はこう。参考までに

次で挽回しようと思い、列車に乗ってふたたび下り方向へ向かった。かつてソメイヨシノの並木で有名だった場所はヒガンバナも植えられている。線路沿いにヒガンバナが揃って植えられている数少ない場所だ。

SLパレオエクスプレスが走る土休日には、人出が多すぎて私はここには来ない。撮影時から他人と同じ写真になることが予想できるのが苦痛だからだ。だが、この日は平日で鉱石貨物列車も運休中で、撮影者は夕方になると私以外に誰もいない。おまけに、夕方になってきて太陽光がやわらいできた。

下り列車としてやってくる列車を正面からねらうと順光になる。ヒガンバナを昼間の順光で見るのは私には美しいと思えない。だが、雲も出てきている夕方の拡散光で、かつ大きくぼかしてしまえばうまくいくのではないか。ヒガンバナは花の形のためか……中途半端にぼかしたり、枯れ始めるときれいに写らないと私は思う。

日中の順光で枯れかけた花をぼかさずに撮るのは、私はぜったいに嫌だ。

列車から下車して現地を見てみると、花は下車駅周辺でちょうど見ごろ。上り方向は離れた踏切付近以外では咲いていない。

そこで、カーブを利用して望遠レンズで列車の正面をねらった。画面端にだけ花を配して、同時に花を大きくぼかすことにした。強い光ならば逆光で花を大きくぼかして撮るつもりだった。強い順光ではぼけも美しくはない。花は透過光で撮るべきものだ。だが、夕方になって太陽光がうまく拡散光になった。これならば順光でもいい感じだ。

300ミリレンズで花を大きくぼかした

花が咲いていない部分は列車で隠す

これを撮ったから夜までここで待つのは飽きた

そうして試写などをしているうちに、5003編成が1535列車としてふたたび下ってきた。運用の読みも合っているし、光の具合もちょうどいい。やったぜ。

■たまには夜の撮影もすることに

ライブビュー(ミラーアップと同じ)で有線リモートケーブルを使い
露出ディレーを使用。ストラップはテープで固定し三脚ケースを
三脚のエンドフックにかけるなど防振対策をできるかぎり行った

このまま、1541列車として下ってくるであろう5002編成をこの駅で待ち続けようかとも考えた。だが、1時間半以上この場所にいるのは飽きる。眠気も強く蒸し暑いし、花と駅を組みわせる構図はさきほど撮った。1541列車が到着する時間はそうとう暗く、補助光を使わないと花はぼかしてもうまく写らないだろう。

そこで「東武鉄道×秩父鉄道 SAITAMAプラチナルート乗車券」をあらためて駆使した。空調の効いている列車で涼んで休みながら、上り方向へふたたび移動した。

最近は夜の撮影をあまりしていなかった。「なんとなく忘れていた」だけで避けていたわけではない。2014年ごろまでは、いちど秩父に来たら日没後までずっと撮影していたというのに。

そんなことを思い出して、寄居からさらに上り方向へ列車に乗り続けた。そして、交換施設のある駅で降りた。物騒ないいかたをすれば、あたかも「殺人予告のような名前」の駅だ。さきほどの駅で下り列車を待つよりも短い時間で列車に遭遇できるはず。ここで夜の写真を撮ったことはないが、絵柄の想像は「長年の秩父党」「電車派」だから想像ができた。

■ぶれ防止対策の徹底
有線のリモートケーブルやパーマセル(シュアーテープ)も持ってきていたので、花火撮影などで身につけた夜景撮影術を思い出して、ぶらさない設定をして三脚を立てて列車が来るのを待った。

レリーズ時のぶれを防ぐためにまず、撮影はライブビューで。ミラーアップと同じ効果があるからだ。さらにシャッターボタンを押し込む際のぶれを防ぐためと機構ぶれを防ぐために、有線リモートケーブルを使い露出ディレーも2秒で設定した。ほぼ無風だったが、カメラのストラップはテープで三脚に固定した。ストラップもたれ下げておくとぶれにつながる危惧がある。そして、三脚ケースには折りたたみ傘や使わない三脚付属品を入れ、三脚のエンドフックにかけた。地面に三脚ケースを接地させることも忘れないように。接地させないとぶれ防止にならない。防振対策を徹底させるためにも明るい時間に到着しておいてよかった。

そうして、1541列車としてやってきた5002編成を写した。今日は電車の運用の読みがぴたりと当たるところも気持ちがいい。

5002列車がふたたび下ってきた。運用の読みもあたった

■「ウヤが怖くて貨物列車を撮れるか」
寝不足で30℃以上の気温のなかで撮影を続けたので、さすがに集中力が切れた。18時を過ぎると真っ暗になってしまう時期になってしまった。ここまで撮れれば満足できたので、家路についた。

居眠りをしながら帰宅して、晩酌をしたらひさしぶりにしたたか酔った。ロシア大統領だったエリツィンが酔ってロシア語特有のRの巻き舌を強めて「ロ、ロ、ロ、ロシア」などと通訳者の米原万里に語っていたくだりが、彼女の著書にあったと思い出した。おそらくは"Р,Р,Р...Россия"とか"Р,Р,Р...Русский"という感じだと想像できる。そうやって自分の一日を振り返った。

「ウッ、ウッ、ウヤが、こっ、こっ、こっ、怖くて、かっ、かっ、かっ、貨物列車(「れっ」は巻き舌)を、とっ、とっ、撮れるっ(「れる」も巻き舌)かってんだ」(ヒック)

吃音や言語障害を揶揄しているのではない。飲んで気が大きくなって大口を叩こうとして、しゃっくりも出て噛んでうまくいえず、非常にカッコ悪いようすを表現している。

鉱石貨物列車は撮影できなかった。ひさしぶりの列車の撮影でもあり、寝不足もあったから失敗もした。それでも、5000系をひさしぶりに写せたのは大満足だし、成果はあった。慣れているためもあるけれど、秩父鉄道がやはり好きなのだ。

【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED, AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC 2024