2010年11月3日水曜日

【しなの鉄道2010年11月】169系S52編成復活湘南色編成撮影記(その3)


【前回のあらすじ】
夜行バスで秋のしなの鉄道撮影に来た「私」は、雨の日の夜明けの暗さと寒さ、そして空腹と戦いつつ、坂城付近のトンネル出入り口で当初の予定通りに169系S52編成復活湘南色編成を撮る。自らのおごりによって影を解き放った「私」は、「まことの名」を知るものは力と影を知らねばならないという苦い思いをかみ締めつつ、次の旅へ向かう……って、途中でなにかまちがえた気がする。

■午後もやってやんよおらおらおら!
少年と出会って元気を出したので、午後もがんばろう! と思い、まずは飯だわ飯おでになんか食わせろ食わせろ最寄の繁華街は上田か! と、上り列車に乗り込んで体を温めた。しかるのちに上田でマクドナルドでなにやら摂取しながら移動し、駅間で撮ろうとして下車した御代田では再び大雨に見舞われるなど、わりと午後は……というより「午後も」ダメな感じだった。だから大きく端折る。不幸日記なんて痛いだろ。「撮影がうまくいったぜドヤア日記」ばかり読まされるのもあれだろうけど。

早朝の列車はうまく撮れたのに、昼の列車はどうもうまくいかない。出発前のイメージトレーニングを重ねに重ねた写真は撮れるくせに、現地でアレンジできないところが、チャンスを生かせない男たるゆえん。しょーがない。ぶっ、不器用ですから。

まあ、なれない早起きをして集中力を使い果たしたんだろうね。

■寒くない場所で撮るにはどうするか
そこで午後はあきらめモードにモードチェンジしまして。軽井沢で『レトロ』号と169系の並びをさくっと撮り、マクドナルドに行ったくせにおぎのやの駅そばをさらに食べてから発車待ちの115系車内で暖を取り、「秋のイメージを横着しながら撮る」べく、『あたらさん』編集部のある信濃追分(当時)にはやめに移動して待つことにした。「しなの鉄道で最も標高の高い駅です」とある信濃追分だってもちろん寒かったけど、待合室があって雨に濡れないで済むから。寒さが私の元気を奪いつつあったのだ。




■雨のなかでしずしずと列車はやってきた
まず、169系快速『リバイバル信州』号を撮る。同時に写したコンデジ動画を再生すると、少し前までは上野駅や大宮駅、高崎駅でもあたりまえのように聞いていた抵抗器の強制通風装置兼電動発電機のブロワ音が響き、自分がいまいつどの時代にいるか少しわからなくなる。

雨はやまない。ほどなくして『レトロ軽井沢』号が続行でやって来た。EF64の汽笛が雨のなかで聞くとわずかに物悲しく聞こえるのは、聞いている人間の勝手なメランコリーか。





ここで15時過ぎのこれら下り『リバイバル信州』と『レトロ』号を撮って今日の撮影をお開きにした。とはいえ帰りのバスは18時出発だ。時間はまだかなりある。でもさ、もう濡れて寒いんだよ。そこで軽井沢から上田まで往復するなど、電車にひたすら乗って移動して暖を取った。なにしろフリー切符を買ったのだから。 

【2020年5月追記】
これにて3部構成でお届けしたしなの鉄道撮影記事は終わりだ。「雨じゃないときに信濃追分~御代田~平原の駅間で撮ってみたいものだ。暖かい装備で冬も撮りたい」などと書いたのに、けっきょく、いまにいたるまでしなの鉄道とご無沙汰している。169系電車はこのあとさらに湘南色化が進められ、引退イベントもあれこれ行われていたのを横目にしながら、一連の騒ぎが嫌で結局これが私自身が169系電車を見た最後の機会となった。このときはそれでも、悪天候もあって人出はそう多くもなく、わりとおだやかな雰囲気ではあったから、殺気立つイベントのために遠出しなかったことは、ささやかな感傷とはいえ、貴重な思い出を守る行為でもあったろう。

このあとでJRから移管された北しなの線もあわせて、再訪したいと思いながらまだかなわない。とはいえ、再訪できないあいだに車両の入れ替えが始まってしまったし……うかうかしてはいられないのだが。

【撮影データ】
Nikon D2X・AI AF Nikkor 35mm f/2D, AI AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED <NEW>, AI AF Nikkor 300mm F4 ED・ISO640〜1,600・RAW(Capture NX2にて現像)・撮影地:しなの鉄道坂城〜戸倉(2010年10月撮影)