2019年10月2日水曜日

【上信電鉄撮影記事】トラトラトラ! ホワイトタイガー最後の日々のこと

たくさんの乗客を乗せて高崎に到着

■さよなら「ホワイトタイガー」クモハ153-クモハ154

9月23日(月・祝)に上信電鉄の150形クモハ153-クモハ154(元西武801系1801編成より改造)が営業運転を終えて、1週間ほど経ってしまった。

首都圏に残された最後の元西武701系系列の電車であり、801系電車として残された最後の1編成で、かつ低運転台の「西武湘南顔」デザインの電車としても首都圏では最後の1編成だった。同編成の廃車が発表になってから、筆者はなんども上州路に通った。

元西武車としてなじみがあったこの編成の引退が惜しいからという理由もあるし、きちんと写真を撮る対象がほしいなあ、という思いもあった。へんな口実だけど、なにしろ1年半ほど体調不良で動けずに、上信電鉄への訪問自体がひさしぶりであったし。

とはいえ、9月になって何度も訪問しても、じつはこの153-154編成が動くところに遭遇できたのは、9月23日に近くなってからだった。最後の連休期間に運転させるためにそれまでは休車をかけていたのかもしれない。

先日記事にした際に夜の下仁田から乗っていた。いちおうそこで満足はしていた。とはいえ、欲は出るものだ。そこで、ヘッドマークが掲出されると発表された3連休に入ってから改めて高崎で降り立って、上信電鉄に乗り換えた。その日のことを書こうと思う。

ヘッドマークはそれぞれ変えてあった

こういうところの芸の細かさに感心する

■台風接近の日の夕方に乗りに行く
さよならヘッドマーク掲出後に私が行ったのは、台風接近が報じられていた日の夕方だった。

意図的にそういう天気の日をねらうほどの酔狂さは持ち合わせていないつもりだけど、そういう日ならばひとは少ないはずだという思いはあって。いろいろと邪(よこしま)だわね。けけけ。まあ、午前中起きられなかったからなのだ。それと、先日見た雨の下仁田駅の光景もとても印象的でよかったから。

それにすでにおわかりだろうけれど、私のところには「晴れた日の順光の編成写真」みたいな写真はほとんど載せないので、そういう写真は「鉄道.com」からほかのみなさんのWebサイトを見てね☆ ごめんね。自分不器用ですから。

首都圏最後の西武湘南顔かも。あ、伊豆箱根?

さて、下り高崎発17時03分の列車になる列車として高崎に入線してくるクモハ153-クモハ154を撮ってから、さっそく乗り込んだ。最初はふつうに下仁田方先頭を見ていたけれど……根小屋を過ぎてから思い出して、あわてて最後尾に行った。そのほうが去りゆく景色を見ることができるものね。

この日はすでに、この153−154編成を置き換える新ホワイトタイガーともいうべき700形第3編成も稼働していて、私が乗っていた列車と新屋(にいや)信号所で交換した。ひさしぶりすぎて「上州新屋」の読みが「じょうしゅうにいや」であることさえ忘れていた。ほら、上毛電気鉄道に「新屋(あらや)」駅があるじゃない。

そんなことはどうでもいいな。ホワイトタイガー同士で交換することは、午後もっと早くから沿線で運用を観察していたひとたちはこのことに気づいていたようで、ふだんは撮影者をほとんど見ない新屋信号所で数人がカメラを構えていて、うなった。みんな、やるなあ。すごいなあ。そういうことへのガッツがない私が問題なのか。

ホワイトタイガー同士で交換させる運用を組むところもニクイ

出力はMT54同等でも、MT46に似た甲高い動作音、AK3コンプレッサーの音に耳をそば立てつつ、じつによく揺れる列車から暮れゆく空を見ていた。もちろん、そのまま下仁田まで行っても構わない。けれどそれもちょっと同じ過ぎて能がないかな、と思い富岡市内で降りてしまった。

■富岡市内の夜の散歩
そうして、そのまま待つのもつまらないのでスマホで経路検索をしたら富岡市内の駅間距離はそれぞれたいして長くない。雰囲気がいい駅はいくつもあるので、上州一ノ宮から上州七日市を経て西富岡まで歩いて戻った。富岡市内の夜の散歩といったところ。

下仁田まで行かないで下車して歩いた

新ホワイトタイガーを撮ったり

西富岡では駅員さんに断ってホームで待たせてもらった。

耳を澄ませていると、遠くから花火の音がする。その日はいせさき花火大会の日だった。40キロくらい離れているのに音が聞こえるなんてことがあるのかなあ。

森高千里のコンサートポスターか、森高はオバサンにならないな、ほんとうに。などと思いながら列車を待った。夜の駅はものおもいにふけるかスマホいじりをするほかにやることがないからね。

私はオジサンになっても森高はオバサンになっていない

ホワイトタイガーに改めて乗り込んで

■上りホワイトタイガーに乗り込んでまた降りる
上り下仁田発18時46分の列車としてやって来た153−154編成に乗る。土曜日の日没後なので車内は部活帰りの高校生と、これから高崎に飲みに行くんだあというひとたちをのぞいては、鉄しか乗っていない。

すっかり暗くていろいろと撮りづらいから、これで引き上げてもいい。それでも、もうちょっとなにか撮れないかと思い、高崎手前でもういちど降りた。

高崎の手前で降りた

「こんどの列車からは乗車位置はいちばん先頭になりますからね」と駅員さん。あ、もうお帰りなんですね。お疲れさまでした。などと雑談をして、私は高崎から下仁田行きになって折り返してくる153−154編成を待った。

待合室で古い掛け時計の音を撮ったり、高崎商科大学よりのコンビニに行ったりして時間をつぶして、あれこれとものおもいにふけるのにも飽きたころに、下り高崎発20時21分の列車として153−154編成が戻ってきた。

踏切警報機が鳴って遮断器が降りる。佐野のわたしから烏川を越えて勾配を越えてきた153−154編成のヘッドライトが見えて、列車が近づいてきた。駅に滑り込んだ列車からの乗降はないようだ。そうして列車は静かに出発していった。

ようし、なんとか撮ったぞ、と思って足元を見たら、近所のとらねこが現れてぐるぐると私の足元を回りはじめて、ちょっと笑う。


下仁田行きを見送った

ねこと少し遊んでから、別れを告げて駅に戻った。

列車を待っているのは私ひとりで、駅員さんはさっき帰ったから、ほかにひとはいないはず。それなのに、待合室のドアががたがたと音を立て始めた。風もないのにふしぎだと思って足元を見たら、さきほどのとらねこが待合室のドアに体をすりつけていた。

ねことしたら、駅に遊びにきたら見知らぬひと(さっき線路沿いで会ったけど)がいてドキドキしたのかも。ごめんな。おどろかせて。



それにしてもなるほどねえ、駅の扉に書いてある近所のねこはこの子だったのか。もう老猫らしく、ずいぶん人間に慣れている。そして、水道のところに置いてあったおぎのやの峠の釜めしの釜の用途も判明して、いろいろとすっきりした。

ホワイトタイガーに会えた

こうして、夕方から乗ったにもかかわらず、主目的の「旧ホワイトタイガー」に乗ることも撮ることもできた。「新ホワイトタイガー」も見た。さらに、駅にいる「ホワイトタイガー」なとらねこにも会えたから、成果は充分すぎる。「トラトラトラ(ワレ奇襲ニ成功セリ)」といったころではないだろうか。

そう言いながらその二日後の9月23日(月・祝)の最終運転日にもあらためて上州路を訪れたのだけどね。パンタグラフをふたつとも上げていたり、日没ごろの列車通過時にとつぜん日が差し始めるなど、その日もおもしろいことがたくさんあった。その話はいずれまた。

【ご注意】ねこがいる駅のことは、上信電鉄が好きでよく通われている方ならば、よくお読みになればどの駅であるかは容易に判別できると思います。そこで私は意図的に駅名を明記していません。駅で飼われているねこではありませんので、なおさら保護のためです。コメントをいただく際にも駅名を書き込むことはご遠慮ください。

【2023年2月6日追記】
駅長さんの貼り紙によると、さる2023年2月3日にねこは永眠したそうです。

【撮影データ】
Sonyα7II/Jupiter-12 35mm F2.8, Jupiter-3 50mm F1.5/RAW/Adobe Photoshop CC 2019