2020年5月19日火曜日

【2018年8月】阪堺電気軌道御陵前から浜寺駅前のこと



■何度もいうけれど……阪堺電車が好きだ
年と一昨年の夏は事情があってそれぞれ2ヶ月ほど大阪・松原市と堺市の境界あたりに長期滞在していて、そのあいまにJR桜井線(万葉まほろば線)と和歌山線JR奈良線、そして阪堺電気軌道(以下、阪堺電車と記す)を撮りに出かけていたとは何度か書いた。桜井線と和歌山線はそのころ置き換え間近の105系電車を見たくて出かけていた。

いっぽう、阪堺電車のほうは滞在先からだと、すぐ目のまえにある大阪府道・奈良県道12号堺大和高田線を5キロほど歩けば花田口停留所がある。すぐ近くを走っていて通いやすく、沿線風景の変化が大きいところが好ましく思えた。もともと、私は路面電車のある町が好きだ。東京都交通局荒川線を幼少のころに見ていたからか。大学生のときに見たモスクワ市電を思い出させるからか。おそらく理由はそのぜんぶ。


だから、いままで出かけたことのあるサンクト・ペテルブルクやプラハ、デュッセルドルフ、ローマはこんどは路面電車を見るために出かけたい。国内なら、広島市電は見たことがあるけれど撮影をしたことがないまま。札幌、函館、豊橋、富山、高岡、福井、岡山、松山、高知、熊本、長崎、鹿児島……とまだあるかな……筑豊電鉄も車両は路面電車型か。国内もこうしてあげてみると未訪問のところばかりだ。一系統がわずかに残されているというウラジオストックも興味があるし。かのリスボンもいいよね。明治村の保存鉄道もいいよな。みんなこれから行ってみよう。



■気軽に乗ることができるから好きなのかも
さて、昨今のように気軽に遠出しづらい情勢になっていまさらながらに気づいたのは、私の鉄道趣味はただ列車を撮るのを楽しむだけではないのだということ。「乗ること」が趣味のなかでもかなり大きな比重を占めていることにきちんと気づいていなかった。乗りつぶしや特殊な経路をおもしろがるほどではないけれど。貨物列車はまだ撮る。

けれど、専用鉄道にあまり興味を持てずにきたこと、スペシャルな臨時列車などよりも通勤列車をおもに撮ってばかりいるのは、きっと「乗れない」ことがあまりおもしろくなく、親近感が持てないからなのかもしれない。気づいていなかった。

もちろん遭遇したら撮るけどね。でも、乗ることができる列車のほうが好きみたい。貨物列車や、一日数往復しか走らない列車などは乗れないことはわかる。けれどやはり、私じしんは移動はすべて自動車ですませて列車は撮るだけ、という撮影をするとあまり満足感を得られないみたい。かっこよくいうと列車にゆられたり、駅での待ち時間から「旅情」ってやつを楽しみたい。見知らぬ土地の列車にゆられていてもたいていはなにもなくて退屈なことが多いけどさ。




■「海が近い雰囲気」が好き
阪堺電車の話に戻る。一昨年の夏に入院するために大阪・松原市に滞在してはじめて阪堺電車に乗り、沿線風景の変化の大きさが気に入ったと何度か書いた。もちろん、大阪も堺もそれまでほとんど行ったことがなかったから、ものめずらしさというエキゾチシズムが自分に大きく作用しているだろうことは否定しない。都電荒川線は見慣れた感じがして異化しづらいのだろうし。それに、それぞれ2ヶ月程度も滞在していたから、沿線で出会ったみなさんに親切にしてもらった思い出もあるので、かなり大きな「ひいき補正」もあるはず。

阪堺電車で好きな場所はいくつもある。上町線の松虫電停から見るあべのハルカス、姫松から帝塚山四丁目までの併用軌道、神之木の南海高野線のオーバーパス、住吉鳥居前付近の併用軌道、それから阪堺線の建て替え前の恵美須町も、東玉出から住吉までの通天閣が遠くに見える併用軌道、我孫子道の車庫、大和川橋梁……ときりがないほど。

雰囲気が好きだけどなかなかじっくり撮らなかったのが、堺市内の綾ノ町停留所から御陵前停留所までの約2.5キロの大道筋(紀州街道)沿いの区間だ。下町らしさがないことや、いつでも行けるような気がしていたからだろう。整備されて専用軌道が道路の中央に敷かれている。

そのうち、大道筋の南端の御陵前停留所から東湊停留所のあいだのあたりが、どことなく海の近くを思わせていい。潮風と潮騒、潮の匂いに引き寄せられて「こっちおいでよー」「いっしょに泳ごう!」と誘いかけてくる水着ギャルのシルエットにだまされて「さいたまホイホイ参号機」に引っかかってしまうような海なし県住人だから(冗談です)。じっさいに、むかしは海の近くだったろうし。年末年始に大小路近くに投宿したのも夜の御陵前停留所を見たかったからだ。





■この区間でモ161形を撮りたいのだが
もっとも、我孫子道から浜寺駅前までは運行本数が少なくなる。年末年始の住吉神社への参拝以外には、私のような路面電車が好きで乗る人以外はやはり並行する南海本線や南海高野線に乗るほうが大阪都心に行くには便利だ。阪堺電車ばかりに乗っていて気づかなかったけど、ためしに都心から浜寺公園まで南海本線に乗ってみると「あっ」というまだった。朝の通勤通学時間はどうかわからないけれど、夏の昼間に我孫子道から南へ乗るのは、浜寺公園の水練学校に行く子どもたちばかりが目についた。路面電車に乗ってプールに行くなんてちょっとうらやましい。

ただ、気になるのは堺市の補助金で堺トラムも導入されて補助金が出ていたのも今年の9月で打ち切られるらしいということ。住人ではないので実態が正しくは見えていない私にはなんともいえないけれど。万が一なくなってしまうなどというのはつまらない。だからまた乗りに行きたい。浜寺駅前停留所すぐ目の前の福栄堂で浜寺名物の松露だんごやちん電どら焼きを買いに行きたい

たまたま自分が見たのが夏場ばかりだったせいか、また夏のシーンを見たい。もっとも、夏のあいだは見られないけれど、モ161形が我孫子道から南へ走るところも見たいのだ。年始に行ったときには1本だけ見ただけだった。モ351形やモ501形も大好きだ。見たいシーンがまだまだたくさんある。



南海本線の高架化にともない、阪堺電車との交差部分が問題になっているようで、船尾停留所の先の府道大阪高石線に接するあたりに仮駅を設けて阪堺線の浜寺駅前停留所を休止して南海本線の高架化完了までの5年間は代行バスを走らせる、あるいは南海浜寺公園駅まで線路を移設して南海と同じ駅にするかという試案(リンク先はPDFファイル)が堺市から発表されているようだ。いずれにせよいまの浜寺駅前停留所のようすはいまのうちに記録しておいたほうがいいだろう。

※5月20日現在、私自身はできるだけ外出しないでいます。4月よりみなさんの退屈しのぎのひとつとしてお役に立てればいいなと思い、以前撮った拙い鉄道動画をYouTubeTwitterにアップしています。あわせてごらんくださいませ。

【撮影データ】
Panasonic LUMIX GX7 Mark II/LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH., LUMIX G 42.5mm / F1.7 ASPH./RAW/Adobe Photoshop CC 2020