2021年5月5日水曜日

【八高線撮影記事】入間川橋梁でハレ切りしながらマニュアルフォーカスニッコールレンズを使う話


■カメラを持ってサイクリング
みなさんは連休をいかがお過ごしだろうか。今年の連休は東京首都圏では強風で荒れ模様になる日が多い。休みだからといってほいほい出かけたりせずに、あれがああなんだから家にいなさいよというメッセージかもしれない。まさか都知事がなにか細工をしたとか……おや誰か来たようだ……冗談だ。

筆者だってもちろん列車に乗ってどこか遠くへ旅をしたいさ。だが、昨今の情勢を鑑みて自宅近辺を絶賛警備するにとどめている。それでも、天気のよく風がそう強くない日の夕方に自転車でサイクリングロードを走ってきた。自転車といっても変速機能のないごくふつうのシティサイクル、いわゆる「ママチャリ」だ。だからせいぜい半径15キロメートル圏内の往復といったところだろうか。少しずつ距離を伸ばしていきたい。

カゴがあるシティサイクルとはいえ、自転車で移動するということは携行する機材を絞る必要がある。でもそれも悪くはない。制限があることでかえって撮影が軽快になってよいかもしれない。それは、筆者は趣味の撮影に出かけるのにもいろいろ考えると持参する機材を増やしてしまい、なにかと荷物を重くしてしまうからだ。

たとえば、朝から晩までどこかの鉄道路線でバッチリ撮ろうなどと考えると、以下のセットを組もうと考えてしまうのだ。

【カメラボディ】
【交換レンズ】
●AI AF Nikkor ED 300mm F4S(IF) 
【周辺機器およびアクセサリー】
●それぞれの予備バッテリー
●モバイルバッテリー
●複数以上のUSBケーブル
●複数以上の予備のメモリーカード
●レンズキャップとボディキャップ
●ステレオマイク
●ハッセルブラッドプロフェッショナルレンズシェード
●黒シュアーテープ(パーマセルテープ)
【三脚と雲台】
Velbon Professional Geo N640またはManfrotto 055X PROB

こういうフル装備にしかねない。趣味の写真撮影ではズームレンズはほとんど使わないので古めの単焦点レンズだ。それぞれひとつひとつは比較的軽いものばかりなのに、それで調子に乗ってたくさん持ち歩こうとすると大きなパッケージになってしまう。元気いっぱいのときならばいいけれどね。

そこで、自転車に乗る際にはボディ一台と交換レンズは多くても3本程度に絞ることにした。予備バッテリーなどの周辺機器はもちろん持つ。これをリュックサックやボディバッグ型のカメラバッグに入れる。サブカメラはiPhoneに任せる。このくらいに割り切って、あとは持っている道具でなんとかする。ベルボンのトラベル小型三脚UT-3ARは持ってもいいかな。2019年夏の在阪生活中にLUMIX GX7 Mark II動画を撮る場合に使っていた。

■荷物を軽量化したくてマニュアルフォーカスレンズを選ぶ
そういうわけで、連休中のとある日の午後遅くに自転車で八高線入間川橋梁まで出かけた。持っていった機材は荷物の軽量化を図るためと、Nikon Dfと組み合わせると見かけが好ましいマニュアルフォーカスのAI Nikkor 28mm f/2.8S、同85mmF2S、同ED 180mm F2.8Sの3本だ。昨年秋より気に入っている3本セットだ。

Nikon Dfと3本のマニュアルフォーカスレンズを選んだのは、その日たまたまネットでPENTAX MXシルバーの写真を見て「かっこいいなあ」としびれてしまったからという、我ながらおかしな理由による。

この時代のカメラは好きだし、PENTAX MXも以前からずっとかっこいいと思っていた機種だ。けれど私自身はフィルムカメラボディを使用可能なコンディションのまま維持することが自分にはいまは困難だと感じているので、もう増やしたくはない。だから、これから入手することはしないな……とここに書いておく。コンタックスメタルフードを使うのも、「手持ちのカメラとレンズをフィルムカメラのようなクラシックな感じの外観にして撮影を楽しく行うため」だ。そうしてフィルムカメラを増やさないようにしているのね。使わないカメラを増やすのは自分の主義に反するもの。なんといっても使わないで壊してしまうのが嫌だし。


もちろん、上記の3本のレンズはデジタルカメラで使っても悪くはない。絞り開放から2段程度絞って、画面内に強い直射光を入れないようにすれば。

■日の入りの方向のことをすっかり忘れていた
ところが、現地に着いてから私は思わずルパン三世のように「あらららら〜」などと声を上げそうになった。この時期の日の入りの方向は、阿岩橋から八高線入間川橋梁を見ると真正面なのだ。つまり画面内に直射光がもろに入る。ここ数年は何度も来ているのに忘れているなんて。いいわけをすると、ここ3年ほどは5月上旬にここに来ていなかったからかも。

ためしにAI Nikkor 85mm F2Sを装着して入間川橋梁を真横から見て、画面内に太陽を入れてみるとフレアが出る。そりゃそうだよなあ。純正よりも長めのレンズフードをつけてパーマセルテープを使っても画面内に太陽を入れてしまっては、フレアは防ぐことはできない。最新のレンズでもきついのではないか。

しかも、鬼舞辻無惨先生ふうにいうところの「ほぼ完璧なレンズフード」である蛇腹式のハッセルブラッドプロフェッショナルレンズシェードは家に置いてきてしまった。でもなあ、太陽が画面内に入り込むようでは、あれを使ってもおそらくフレアは防げない。

冒頭の写真は現像時にコントラストの補正をしているものの、フレアが出てシャドーがしまらない。でも、私はフレアを画面内に入れたくて1980年代のレンズを使っているわけではない。それに、シャドーがきちんとしまって撮影できてこそ、現像時にシャドーを持ち上げやすいのだ。

こういう古いレンズのコーティングは変えることはできなくても、鏡筒内に反射防止対策のコバ塗りなどのカスタム改造をしてくれる修理屋さんはないかなあ、などと真剣に考えるくらいだ。

しかも、画面内に太陽が入らないようにしても、画面内に強い光を受けている感じがどうにもおかしい。そこで、非純正の長いメタルフード装着してパーマセルテープを開口部に貼ったAI Nikkor 180mm F2.8Sにレンズを交換して、アングルを変えた。このほうがまだフレアが出ない。




■フレアが生じるならば列車で太陽を隠せばいいじゃない
そうやって上下一本ずつ列車を撮影した。河原に降りて構図を変えようかなと思いながら太陽の動きを見ていて、ようやく頭が回ってきた。太陽を画面内に入れてフレアが発生するならば、太陽を画面内に入れなければいい、あるいは隠してしまえばいい。

つまり、列車をうまく使えば太陽の姿を隠すことができるし、太陽が橋梁の向こう側にある山の稜線に隠れてしまえばフレアは生じないはずだ。



そう思ってさらに列車を待った。いつもそうやって日没後にも撮っているのだ。ひさしぶりに列車を撮るのにそんなことも忘れているとはね。帰ってしまわないでねばってみてよかったというわけだ。マニュアルフォーカスレンズでもこうしてなんとかできると思うと、また使いたくなるね。いろいろ手をかけて頭も使うことになるから、なにかと好都合だ。

【撮影データ】
Nikon Df/AI Nikkor 85mm F2S, AI Nikkor ED 180mm F2.8S/RAW/Adobe Photoshop CC