2020年10月26日月曜日

【秩父鉄道撮影記事】マニュアルフォーカスニッコールレンズを持って秋晴れの秩父路散歩(その3)デキ303と102にも遭遇す


■上り方踏切にもう一度行ってみた
Nikon Dfと単焦点のマニュアルフォーカスのSタイプAIニッコールレンズ(AI-Sレンズ)を4本持って、ふらりと秩父鉄道の武甲山の麓の駅に降り立った日の話の続きだ。三輪(みのわ)鉱山から降りてくるデキ105牽引の鉱石貨物列車が武甲山の麓の駅構内でいちど停車し、操車掛氏を降ろしてからふたたび走り出すようすを見届けたあと、上り方踏切まで歩いた。おそらく、そう待つことなく次の鉱石貨物列車も来るはずだから。

とことこと歩いて踏切にたどり着くとまもなく遠くから風に乗って汽笛が聞こえてきた。水色の車体の車両が近づいてくる。前照灯がこんどは2灯ある機関車だ。そうして踏切で待っていると、武甲山の麓の駅にさしかかる最後の勾配をデキ303号が空車のヲキ・ヲキフを牽引して現れた。やっほー! またもや地味な青いデキ!


■同じ写真ばかりではあきるので移動して
一連の動きは把握したので、また三輪線の分岐点の湯乃澤橋で待っていてもいいけれど、同じ写真を量産するだけだ。そろそろ上り方に移動もしたい。そこで、駅のプラットホームで上り列車を待った。

そのあいだにさきほどのデキ303が三輪鉱山から降りてきたので、そのようすを撮ってから先行する上り列車に乗った。さすがにお昼ご飯を食べないでいて集中力も切れてきたので、駅近くにセブンイレブンのある駅で降りてコンビニで買い物をしてから、線路ぎわで待った。


Ai Nikkor ED 180mm F2.8Sが持ってきたレンズのなかでもっとも焦点距離が長い。この場所はもっと焦点距離の長いレンズを使うほうが架線柱をめだたせないで済むことはわかっていた。この絵も過去に何度も撮ったけどねえ。ここが好きなのは、列車が遠くから勾配を下りてくるようすを眺めることができるから。



■列車以外の絵も撮りつつふたたび移動
デキ303号が牽引する上り鉱石貨物列車を撮ってからはふたたび上り列車に乗った。夕方はひさしぶりに荒川橋梁に行こうと思っていた。とはいえ、いったん河原に降りたもののまだ日が高くて河原から撮るには、自分にとっては早い。

そこでいちど写真をあきらめて上長瀞から長瀞まで散歩をした。ねこににらまれたり、バイク好きなかたと世間話をしたり。ようは、河原で強い日差しを浴び続けることにくたびれて、写真を撮る集中力がいちど切れたのだ。



そのあいだにも何本もの鉱石貨物列車が行き来するのは、姿が見えなくても汽笛が聞こえてくるのでわかっていた。だんだんと太陽が傾いて日差しが赤みを帯びていくのを見ていて気にはなっていても、どういうふうに撮ろうかなあというアイデアがいまひとつ浮かばない。そうして長瀞駅構内が見渡せる線路ぎわで、ぼんやりと雑草を見ているとまたもや下り鉱石貨物列車が姿を現した。前照灯は1灯……デキ102号! 

下り列車を撮るにはふさわしくない場所だけどなあ、と思いながらもなんとか絵にしたくてカメラを構えた。そこを静かにデキ102号が通過していく。むしろ振り返ってコセンダングサと去りゆく貨車を撮ったほうが、うまくいった。今日は線路ぎわにいるとむかしながらの水色のデキばかり見ることができて、ヲタとしてもとてもうれしい。

ここで「ぼんやりしていてはいかん」とふたたびスイッチが入り、河原に戻った。そして日没すぎまであれこれ撮っていて、寒さに凍えた。けれど、気持ちが充実したのか夜もなかなか寝つけなかった。

■軽くて小さいレンズと秩父鉄道のよさを「再発見」した


この日は前述の通りに⌀52mmのAI Nikkor 28mm f/2.8S、AI Nikkor 50mm F1.8SとAI Nikkor 85mm F2S、そして⌀72mmのAI Nikkor ED 180mm F2.8Sを使った。180mm F2.8Sはともかくとして、そのほかのレンズはAI 28mm f/2.8Sが250g、AI 50mm F1.8Sが175g、AI 85mm F2Sが310gしかない。AI ED 180mm F2.8Sも800gだからそう重いわけではない。

いっぽう、Nikon Dfボディは約765g(ボディキャップ除く、バッテリーとメモリーカード含む)でニコンFXフォーマットのカメラとしては軽量ではある。ところが、ここしばらく使っているうちに、重いレンズと組み合わせると自分にとっては軽いボディとレンズの重量バランスがいまひとつよろしくないためか、なんとなくくたびれるように感じていた。以前使わせてもらっていたときには軽いと思っていたのに。

Dfにはバッテリーグリップは純正では用意されていないので、ボディの側の重さを「補重」するには純正グリップDF-GR1しかない。しかしそれでもバランスはあまりよくはならない。社外品ならばサードパーティからかつてはいくつかバッテリーグリップが発売されていたものの、さすがに電源まわりがあれなのは故障させないかと思うとおそろしいですよ。そして自作する工作力は私にはない。

そこでDfボディに試しに軽くて小柄なレンズと組み合わせてみると、軽快で楽しいことがわかった。いまさらながらの「発見」だ。

いいわけをすると、以前試用した際には比較的軽量なGタイプのAFズームレンズをおもに使っていたことと、DXフォーマットのカメラボディではうまく使いこなすことができなかったAI Nikkor 35mm f/1.4SやAI Nikkor 85mm F1.4Sなどのやや重みのある単焦点のマニュアルフォーカス大口径レンズと組み合わせたいという気持ちでDfを手に入れたので、「軽いレンズと組めばバランスがよくなる」というあたりまえのことを忘れていたわけだ。

DタイプのAI AFニッコール単焦点レンズも各種所有しているし、Dfとキットレンズになる軽量なAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)もあとから手に入れたのにね。もともと、ボディにやや厚みがあるので、レンズ側も比較的大柄のもののほうがバランスが合ってかっこいいのではないかと思うフシもあった。

Dfとこの軽量なマニュアルフォーカスレンズの組み合わせは気に入ったので、今後も趣味の写真にはこのセットで持ち歩いてみようと思う。見かけも似合うしね。趣味の写真ではズームレンズを使わないで足と頭を使ってなんとかしたいという、たいへんかたくなな気持ちが私にはある。

もちろん、1980年代に発売開始されて、一部のモデルはつい先ごろまで現行製品だったSタイプのマニュアルフォーカスAIニッコールレンズは比較的モダンな設計のレンズではあっても、コーティングと内面反射対策に関しては最新の高画素デジタルカメラに対応したレンズには及ばないので、ゴーストとフレアへの注意は必要だ。絞り開放で端から端まで高解像ということもない。ゴーストとフレアに注意して絞ればいいのさ。光源を画面内に入れるとゴーストが発生してしまうのはもうしかたがないなあ。光源の向きやカメラボディとの組み合わせにもよるだろうし。最新のレンズよりも気を配らねばならない要素はたくさんあるけれど、自分の写真に必要なあれこれを工夫しながら使うのは、頭の体操みたいで楽しい。

私がこれら少し前のレンズを使うのは、いまでも工夫すれば使える画質であることや、外観の意匠が好きなこと、比較的コンパクトなサイズであることから、所有し続けているのでなじんでいるから。すごく簡単にいえば「好きだから」というひとことにつきる。合理性よりも主観や好みの問題だ。

そして同時に、ひさしぶりに秩父鉄道沿線を歩いて鉱石貨物列車を撮る楽しさを再発見できたことが自分にとってのもうひとつの収穫だった。一時期は年間に25回以上通っていたこともあるのに、ここ数年はいろいろな理由により、残念ながら訪問回数が減っていたのだ。今年はまあアレがナニだから……という理由はあるけれど。鉱石貨物列車をねらいにこれからも秩父鉄道沿線を訪ねたいし、まだ自分が撮ったことのない情景を探したくなった。

【撮影データ】
Nikon Df/AI Nikkor 85mm F2S, AI Nikkor ED 180mm F2.8S/RAW/Adobe Photoshop CC 2021