■坂の下の駅は春の日差し
雪が降った数日後に秩父鉄道の武甲山の麓の駅にある構内側線を訪ねた日の続きだ。残雪は美しいが日陰で朝8時半から正午までいると、寒さに飽きてしまった。
飽きてしまった理由はもうひとつある。三輪鉱山行き列車の牽引機が、第一便こそデキ102でガッツポーズをしたものの、第二便はデキ507で第三便がデキ501、そして第四便がデキ502とデキ500形ばかりやってくるようになったから。
そこで秩父市内の別のところへ移動した。武州原谷貨物駅から坂を下った駅で降りようとすると、こんどはデキ503が牽引する鉱石貨物列車と交換した。
日向はすっかり春の日差しで、秩父市内の市街地の雪はどんどんと溶けていた。明るくて春のようだ。2月の日差しはこんなふうにどこか春めいているようにいつも思う。
■積車のデキ502がやってきて
三輪鉱山でも見かけたデキ502が坂を降りてくるようすを撮った。気温が上がり300ミリレンズで撮ると線路に像のゆらぎが見える。ここは完全逆光になるが超望遠で撮るのが好きで昔から来る。ひさしぶりに来たら第4種踏切のセンサーの角度が広がり、自動音声が新しくなっていて、列車の姿を感知しても「あぶない!」と鳴るようになっていた。
ナナハチ(7800形)の各駅停車も坂を降りてきた。すると、武州原谷行きの鉱石貨物列車の先頭はデキ504だった。牽引機がまたデキ500形だから、ちょっと笑ってしまった。
■待合室にも日が差す
まだ日は高いのだが、早起きしたことと朝の列車の撮影で集中力を使い果たしてしまった感じがある。だから撮影を止めて上り列車で移動することにして、駅舎に入った。
ここはずっと有人駅だったから、無人化されてしまいさみしい雰囲気も感じもしないでもない。意図的にレトロな意匠が残されている素敵な駅だから、荒らされないといいのだが、と切に願う。
屋根の雪がひさしから溶けて滴っているようすと、駅舎のなかに日が差すようすをしばらく見てから上り列車に乗った。どこかで降りようかと思いつつ乗り続けていたら、波久礼でデキ102牽引返空鉱石貨物列車と交換した。持っている古いダイヤグラムとはどうもスジが異なる気がする。どうやら昨年春に変更になったようだ。下調べはしたが、最新版の貨物時刻表などを持っていないで撮影に来たから。
それを見て「下り方向に戻って夕方から夜のデキ102を撮ろうか」といっしゅん思ったものの、雲も出てきてしまい、結局そのまま寄居で下車して東武東上線で帰宅してしまった。集中力がいったん切れるとあまりうまく撮れないからだ。
かつての自分は、少なくとも30歳代だったら朝から夜までがっちり張りついて撮っていたし、40歳代でももう少し粘り強さがあっただろう。いまは集中力のあるときにだけ全集中というふうに、試合運びを変えていく必要がある。呼吸の使い方を身に着けないと鬼を斬れない。
更年期とはこういうことなのだろう。加齢を嘆くばかりではつまらない。頭と体の使い方の工夫を考えるんだ。
【撮影データ】
NikonDf,NikonD7200/AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D, AI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D, AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED, AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC 2024