年の瀬も押し迫るある日の午前8時過ぎに、私は武甲山のふもとの駅に降り立った。天気予報アプリによると秩父地方の気温は1℃程度。ほほを刺す空気が冷たい。
冬至すぎで日の出が遅く、日の出は7時ごろだ。そして雲が多く、武甲山に太陽が隠れる位置にあるために、あたりはまだ薄暗い。
寄居駅で日の出を迎えた |
駅構内外れの三輪(みのわ)線へ行く列車の先頭には、デキ302とデキ506がいた。詰所から機関士氏が姿を現し、パンタグラフを上げてデキ302の前照灯を一瞬だけ光らせるさまを目にした。これならば今日は鉱石貨物列車は走るはずだ。
鉱山行き第1便は8時20分すぎにふもとの駅を出る。この列車の牽引機を知りたいから地元駅の始発列車に乗ってやってきた。
じつをいうとこの一月ほど私は持病の体調不良に困らされていた。ようやく回復の兆しが見え始めた。冬の早朝の撮影はついおっくうになりがちだが、自分に活を入れたい気持ちもあった。そう思ってひさしぶりにここへ来た。
晴れると鉱山構内は完全逆光。でもエキゾーストが輝くんだぜ |
キヤノンゼラチンフィルターホルダー用レンズフードを使った |
今回はいつものNikon「72mm偏光フィルター用レンズフードHN-13」を持参せず、キヤノンゼラチンフィルターホルダー用レンズフードを使った。それだけではフレアを防ぐことはできず、左手も使った。
鉱山のほうから日が差してくる |
だが太陽が画面内に入るとフレアが出る |
傘でフレアをカットすることに |
鉱山行き列車を日陰で待つのは、好きで来ているにもかかわらず退屈する。日陰の寒さに、つい「寒い。ここにあと何年」とハマーン・カーンのセリフを口ずさみそうになる(盛った)。
そこへ、D502ではなく人間のほうの「三輪鉱山の主(あるじ、もしくはぬし)の方」が「定期巡回」に現れたので、いろいろとご教示いただいた。いわく「今日(の鉱山行き列車)は4本しか来(き)ねえ」という。たいてい4本だ。正午までここで運用確認のために待つつもりでいたから、覚悟を決めた。
「今日は風もないしそれほど寒くはない」「霜柱もないし、霜もたいしてない」のだそうだ。そういわれると、たしかに風はなくあちこちで氷が張ってはいない。冷えるとこのあたりではあちこちで凍結していることがあるが、この日は路面も凍ってはいなかった。それにここは小惑星アクシズではない。地球の日本国埼玉県秩父市内だ。
だが、日陰で待っているだけで体を動かさないでいるのは冷える。この場所で冬に撮る方には、温かい飲み物と携帯用カイロの持参を強くすすめるぜ。持参しても寒いけどね。
夏でも冬でも三脚用に黒い折りたたみ傘をつねに持参する |
正午をすぎると太陽光がレンズ前玉に当たるようになってきた。列車に日があたり背景の緑も輝いてきれいなのだが、逆光に強いレンズではないとフレアが出る。レンズフードを長くして黒パ(パーマセルテープ、正確にはシュアーテープ)を使ってもほとんど効果がない。
そこでいつものように黒い雨傘でハレ切りをすることに。レンズの前玉に光を当てないようにすればいいのだ。時間はたっぷりあるから、釣りの仕掛けを考えるように工夫はできる。
「たかが石ころ一つ、ガンダムで押し出してやる!」などと『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のセリフなどを考えるくらいの余裕はあったということさ。
鉱山発第4便になるとあたりが明るくなる |
前夜に到着した2本の列車の牽引機は前述のようにデキ302とデキ506だった。その後、1時間おきにやってくる列車を試しに待ってみたところ、牽引機はデキ504とデキ505だった。
20パーミルの勾配を登る運用だし、機関車はあまり気味だからか。最近は「比較的新しいデキ300形とデキ500形をおもに使い、残りのデキ100形3両をときおり使う」とでもいうような運用によく遭遇する。今日もそのパターンのようだ。
こうして震えながら鉱山発の4本の列車を見届けた。そして、上り方面へ移動することにした。武州原谷止まりの列車の運用も確認したいし、とにもかくにも体も動かしたくなった。
【撮影データ】
Nikon Df/AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED, AI AF Nikkor ED 300mm F4S (IF)/RAW/Adobe Photoshop CC 2024