2024年12月10日火曜日

【秩父鉄道2011年】1002編成に出会った小春日和の日の思い出

熊谷から1003編成に乗って下車した

■印象に残った小春日和の日のこと
それなりに長く同じ路線を訪問していると、とても強く印象に残ったできごとがいくつもあるようになるはずだ。筆者にとっては一時期非常にひんぱんに通った秩父鉄道沿線にいくつもの思い出がある。たとえば、2009年11月中旬の大雨の日のことは忘れられない。夕方になって太陽が出てきて、非常に印象的な夕焼けになったからだ。

今回は2011年のやはり11月中旬の日に北武区間(羽生〜熊谷の旧北武鉄道が開通を意図した区間)を訪問した日のことを書く。

EXIFによると2011年11月20日なのだそうだ。そのころ筆者は高崎線沿線の「ダーチャ」(ロシア語:別荘)に滞在していた。「別荘暮らし」とはいえ「法を犯した」という意味ではけっしてなく、とある皮膚科疾患の長期療養のためだ。当時、主治医が勤務していた滞在場所は高崎線沿線にあった。そして、日中は外出して運動せよといわれて許可をもらっていたために、県南部の自宅からよりも秩父鉄道北武区間を訪問しやすかった。

いま調べてみると、この2011年11月20日はまさに小春日和というべき天気だったようで、気象庁のウェブサイトで調べてみると、15時時点でも熊谷地方の気温が20℃もあったそうだ。湿度もやや高く、汗ばむような陽気だった記憶はたしかにある。

高崎線から秩父鉄道に乗り換えてプラットホームに入ると、羽生行きに1000系電車1003編成が充当されてきた。当時、秩父鉄道オリジナルカラーからオレンジバーミリオンに塗り替えて数ヶ月しか経っていなくて、まだオレンジに艶があった。この編成を見て迷わずに北武区間に行くことに決めたはずだ。そうして、畑のなかにある駅まで揺られた。最後尾のデハ1003号車から過ぎゆく景色を眺めつつ、コンパクトデジタルカメラのキヤノンIXY DIGITAL 2000 ISでMT46主電動機のモーター音を収めた。



■上り方に歩いて田んぼの畦道に立ってみて
当時は駅前に大きな農業倉庫の残されていた「田んぼのなかの駅」は駅下り方すぐの直線区間も左右が田んぼだが、上り方に少し歩いて集落と見沼代用水を越えた先の曲線区間もいい。のちの2022年春にも、ここでデキ201+12系客車+デキ105をとらえている。ただし、都市近郊にある田んぼだから、カメラを構える高さなどを工夫しないと背景に住宅や小学校の校舎、反対を見ても道路のオーバーパス、ラブホテルも映り込む。上記の動画を見ていただけるとわかるかもしれない。もっとも、自分が列車以外に背景にまで気を使えるようになるには、このあと数年かかったのだが。

この日は湿度が高くて雲がもくもくと育っていて、それが西日を浴びるようすを見ていると、思わず歓声を上げてしまった。列車の背景を空に抜きたくなった。

西日のなかの赤い自動車に心惹かれた

まさかの1002編成の登場

■そこへ大好きな1002編成がやってきた
すると羽生行き列車に、そのころの秩父鉄道の電車で自分がいちばん好ましく思っていたあずき色とはだ色のツートンカラーをまとっていた1002編成「秩鉄リバイバルカラーデハ100形タイプ」がやってきた。予期していなかったからなおのことうれしかった。

D2Xに85mmを装着して後追いでとりあえず撮った。だが、127mm相当での背景の立ち上がりがいまひとつ気に入らない。架線柱を引きつけて大きく写してしまうし、背景の集落などはめだななくていい。そこで、AI Nikkor 50mm F1.8Sに交換して75mm相当にして、列車の走る築堤と自分の立ち位置を工夫して列車の背後にある建物などを隠すことを考えた。

あいまにやってきた1010編成で試したところ、気に入った。それにしてもとてもいい光だ。明るいうちに羽生から1002編成が戻ってきてくれればいいのだが、とやきもきしていた記憶がある。

すごい雲だ

1010編成の運転士もまぶしそうだ

夏のような雲

湿度も高い日だった

■日没後になって1002編成はやってきた
列車を待つあいだにも、大げさに言えば「太陽と雲の織りなすドラマ」を息を呑んで眺めていた。あたりの都市郊外の風景がとても美しく見えて、何度もシャッターを切った。現像時にホワイトバランスを5,000Kのまま赤みを強めていないのに、それでもいい感じの赤みだ。ハーフNDフィルターも円偏光フィルターも使わず、現像時にコントラストも強めていないのに強烈だ。

日没してまだ明るさのあるころになって、おめあての1002編成がやってきた。空の雲もまだドラマチックなままだ。築堤の下でしゃがんで、築堤の向こう側の建物を入れないように注意しながら、どきどきしながらシャッターを切った。もう少し明るい時間に来てくれたらとそのときは思っていたが、列車の手前側面の影が濃くなりすぎたろうから、この薄暮の明るさはこれはこれでいい。むしろヘッドライトを目立たせることができた。

1002編成はこの日は熊谷入庫だったようで、こうして入庫する列車をぎりぎり撮ることができたのだから、それもじつに幸運だった。

カメラを構える高さをすごく強く意識した記憶がある

羽生行き急行列車が通過

こんな空を見るとまだ帰りたくなくなる

この日は残照もすばらしかった。このあと駅に向かって歩きながらもなんども足が止まってしまった。駅前駐車場から見たプラットホームの雰囲気もよく、そこをたまたま急行列車が通過していく姿にもしびれた。そして、駅の改札から見た空のようすも、いつまでもそこにい続けたく思わせて困ったほど。

もう10年以上経つのに忘れられない。11月から12月の小春日和の日に撮影に行くと、いつも気に入った写真が得られるように思う。これからも、晩秋から初冬の小春日和にはカメラを持っているようにしたい。

【撮影データ】
Nikon D2X/AI Nikkor 35mm f/1.4S, AI Nikkor 50mm F1.8S, AI Nikkor 85mm F1.4S/RAW/Adobe Photoshop CC 2024/2011年11月