2012年8月18日土曜日

【小湊鐵道ついで鉄記事 その2】「昭和過ぎる」小湊鐵道で往復する


町内会のお祭りや夜の車庫を見たりして、五井駅とその周辺で楽しい夜のひとときを過ごした翌朝、小湊鐵道で養老渓谷を目指すことにした。

本来は私たちは海水浴に来たはずなのだけど、海で遊んでみた我が子は、しおみずがしみるからなあ、という。そこで海ではなくて川で遊ぶことにした。目的地なぞ変更すればよいのだ。

投宿先からの道すがらに五井駅そばの電鐘式踏切や機関区の貨車を眺め、キハ200の入れ替えシーンを撮ってから、養老渓谷行きに乗り込んだ。

車内は観光客以外にも、なぜか揃ってキスデジを提げた男性集団やら、オリ※パスペンEPにスマートフォンで武装した独身貴族な三十路風一人旅やらがたくさんいる。
十数年ぶりに小湊鐵道に乗ってみたら、どうも鉄道ファン以外の人たちに大ブレイクしているらしい。 げげ。

列車が海士有木、上総牛久と進んで、上総鶴舞、高滝、里見、飯給と進むにつれて驚いた。有名な駅には真夏の真っ昼間なのに必ずカメラを構えた人がいる。飯給なんて桜の咲く季節でもなくライトアップのない日中なのに、カメラ女子が神社から駅を撮っている。 いったいどうなってんの?

私が初めて小湊鐵道に乗った1985年ごろはハイキングブームで、養老渓谷にハイキングに行く人はたくさんいて休日の列車は満員だった。1997年ごろは、すでに貴重なローカル線の風景の得られる場所として有名になっていたけど、それでも真夏の昼間に、いわゆる「鉄」じゃない人たちがたくさん来てカメラを向けている、などという光景は見たことがなかった。お盆休みとはいえ、真っ昼間に列車を撮っている人が山ほどいるというのは初めて見た。

列車が歩みを進めていくと、日本の典型的なローカル線の風景が次々と車窓に広がる。でも、あちこちに線路内や線路沿いの私有地に入らないで、と書かれているのが気になる。沿線住民と鉄道を撮る人たちのあいだにトラブルが起き始めている証拠だ。 うーん、「沿線風景はすばらしいけれど、京成顔のキハ200しかいないから撮る気がしない」などと言わずに、みんなに見向きされない牧歌的な時代に撮っておくべきであったか。

養老渓谷駅に着いて、キハ200を撮るカメラの砲列や駅にいる猫たちを撮る観光客、カメラ女子たちを潜り抜け、粟滝行きバスに乗る。こちらも木の床と油のにおいが懐かしい。

さて、ひとしきり川遊びをしてから駅に戻り、駅猫を見ていた。猫たちはあきらかにカメラを持つ人たちを警戒している。カメラを向けると実に不快だという顔をする。まあ、猫とはそういう生き物だ。

それにしてもこう、なんだかオモチャだらけの駅になっていて、我が子にさんざんおねだりされたのがうっとうしくて、駅員に頼んでホームで待たせてもらった。すると駅員は私たちのフリー切符を見て、次の五井行きは先に来る上総中野行きの折り返しだから、どうせなら上総中野まで乗って戻ってきたら、と勧める。そこで、中野行きに乗ることにした。 

すでにホームにはカメラを持つ客がたくさんいた。みなさん動きが明らかに鉄ではなく、周囲のカメラを持つ人の動きを見ていない感じ。ああ、こいつはにわか鉄か、鉄に敵意を持つガジェット野郎だな、と。明らかに撮り慣れていないもの。

とつぜん我が子に大声で聞かれた。ねえ、なんでみんなカメラもってんのお!?  大爆笑だ。

のそのそとやってきた下り列車に乗り込んで、ひと駅揺られて上総中野に着いてびっくりした。なんなの、このカメラの砲列は! そして、大原から来たいすみ300形が小湊鐵道のキハ200と並んだので、またまた大騒ぎに。これはもし、いすみ鉄道の待ち合わせがキハ52だったらパニックか暴動にでもなったのではないか(笑)。

「人が同じアングルで狙っているのを見るだけで撮る気が失せる」ほどのたいへんあまのじゃくな私は、下車して撮影する気持ちが正直言って萎えてしまった。イベント列車が走るような場面でよく見かける「ペンタックス67に銀箱とハスキークイックセットのベテラン鉄おじさま集団」は、何かあるとすぐに怒鳴るから嫌いなのだけど、ライトな鉄道ファンというか、観光客とにわか鉄道ファン集団は無秩序で見ていて怖いのだ。きちんと譲り合って自分が他人のカメラの邪魔をしていないか確かめているだろうか。列車の運行を妨害してはいないだろうか。ああ。運転士に注意されてるのがいるよ。 ちょっとげんなり。 

私たちは養老渓谷で最後部に乗り込んだので、そのまま助手席側最前部の席に座り、五井まで戻った。あたりの風景が西日で赤く染まり、帰宅するのが惜しくなる。上総大久保を出たカーブでもカメラの砲列が並んでいた。 

列車から夕闇迫る空を見ていたら、カメラを提げた人をたくさん見たせいか、我が子はカメラを貸してほしいと言う。そらをうつすから。と赤く染まる空を撮らせてみたら、もえてるみたい! と喜んでいた。 カメラを持つ人たちみんながそういう純粋な気持ちで、しかも、そういう環境をぶちこわさない行動を心がけることができればいいのにな、と思いつつ、どう返事をしようか迷った。

今回のエントリーをどう書くかについても、しばし考えこんでしまった。

私自身もカメラを持って訪ねる一人だし、地方私鉄に乗客が増えるのは素直にうれしい。小湊鐵道や沿線自治体のPRが実っているとも思うし、かつて、超マイナーながら編集に携わっていた雑誌でも、小湊鐵道の素敵なイメージを取り上げたから、少しは責任みたいな気持ちもある。この貴重なローカルムードあふれる雰囲気を独り占めしたいとは思わないし、好きな場所を自由に撮れるこの国のよさも感じる。

でもなにか引っかかるのはどういうことか。 カメラを持つことは特権でもなんでもないのに。カメラを持つと傍若無人になったり、ほかのカメラを持つ人のことが見えなくなる人がどうして多いの。だいたい、趣味の写真なんてそんなに血眼になってガイドブックに乗っている場所で撮りまくらなくてもいいんじゃないのか。

「血眼になって趣味の写真を撮る」私があえて言うのも変だけど。 それにしても、みんなで趣味の写真を気持ちよく撮るにはどうしたらいいのだろう。大昔のように、一部のエリートだけの趣味であってはほしくないのに。

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