2019年9月13日金曜日

【ソ連製ライカスクリューマウントレンズ関連記事】心境の変化で放置していたソ連製ライカスクリューマウントレンズを使い始めた話


■おかしいね……涙が止まりませんよ
「気まぐれを許して」とかつて椎名林檎が歌っていたものだっけ。ここ二週間ほど筆者はライカスクリューマウントレンズにすっかり夢中だ。しかもソ連製の。大学生のころから社会人になった20年ほど前にロシアに行って、あるいはネットオークションなどで手に入れてからずっと所有していたレンズを、友人から借りたソニーα7IIにつけて悦に入っている。

これらのレンズはずっと持っていたのに、ひさしく使っていなかった。それを使って写真を撮るのがなんだかおもしろくなってしまった。おかしいな。




■好奇心は封印しなくてもいいや
ここしばらく、私はこうした古いカメラやレンズで遊ぶのをずっと封印していた。古いものばかり好むめんどうくさいひとだと思われたくないとさえ思っていたし、日進月歩で進歩するデジタルカメラとレンズのテクノロジーについて研究しながら享受して、いままで撮れなかった写真が撮影できるようになるというほうが魅力的だったからだ。

その思いはいまも変わらなくて、たとえばこれから突然「ズミクロンの写りがうんぬん」「ツヴァイ・プンクトだろやっぱ」などとドイツ製品をとうとうと語るようにはならないとは思う。もしそうなったらなったで生暖かく見守ってください。これから勉強しないと語るほどは知らない。そこまでいかない。けれどふと、いまのデジタルカメラでは手持ちの古いレンズはどんなふうに撮れるのだろうという興味は封印しなくてもいいや、という思いに駆られるようになった、というわけ。

まあ、こういう心境の変化は病気をしてまったく活動できなかった期間があったりしたからじゃないかな。人生は有限であることに気づいてしまったともいえる。さすがに、フィルムで距離計連動式カメラで撮ろうとまでは思わない。それはちょっとちがうんだ。


■α7IIとVM-E Close Focus Adapterのおかげ
ミラーレスのデジタルカメラが登場して10年になる。10年ほど前にマイクロフォーサーズ規格のカメラが登場したさいに、これらフランジバックの短いライカマウントレンズなどをマウントアダプターを介して使う方法が少し流行った。私はそれを端から見ていて気にはしていたものの、自分自身では手を出さなかった。焦点距離がレンズ表記の倍になるのが気に食わなかったからだ。

電子ビューファインダーは光学ファインダーとことなり、部分拡大が容易でピント合わせがしやすい。これがミラーレス機の大いなる福音だった。そして、APS-CサイズセンサーのソニーNEXシリーズが登場し、マニュアルフォーカス時にピーキング機能が搭載されて、これらマウントアダプター遊びがさらにしやすくなった。そのときも私自身は自分ではオールドレンズ遊びをすることがなかった。

そうして、35ミリフルサイズのミラーレス機であるソニーα7シリーズが登場して数年がたった。ボディ自体も改良がされて、α7IIからはボディ内に手ぶれ補正機構が備えられて、オールドレンズ遊びがかなりしやすくなった。

私はいわば、いろいろな先達の「人柱」をありがとうありがとう、みなさんの苦労のおかげでこうしてオールドレンズ遊びがしやすくなりました。なむなむなむなむ。などとおがみながら、ようやく重い腰を上げたというところ。

なによりも借り物のα7IIとコシナのVoigtlander VM-E Close Focus Adapterがなかったら、このオールドレンズ遊びもあまりおもしろくならなかった。アダプターだけは買った。というのは、ライカスクリューマウントレンズは最短撮影距離が距離計連動式ボディにあわせてあり、50mmレンズで1メートル程度と長い。一眼レフカメラでもマクロレンズを「標準レンズ」にしている私にとっては、「ほとんど近接できない」にひとしく、そのままではあまりおもしろくない。それが、ヘリコイドを備えたVM-E Close Focus Adapterを使うと、一眼レフ用レンズ同等とまではいえないけれど、意外と近接できるようになる。

モスクワのイズマイロフ公園の蚤の市で買ったM39マウントのJupiter-9 85mm f/2などは、Zorki-3ボディやCanon7ボディでも装着できるしそれで撮ったこともある。けれど、使いやすいとは決していえなかった。それが、割り当てた拡大ボタンを押しながらファインダー内のピント像をボタンひとつで拡大させてピント像やぼけ像を確認しつつ、それなりに近接できるのだから、これはもうα7IIとVM-E Close Focus Adapterのおかげだ。

■α7IIは「仕事道具」としてはいいよね
ただし、α7IIのデザインはまったくカッコよくないな。Sonyのロゴデザインと「一眼レフカメラふう」デザインが似合わない気がするので、パーマセルテープを貼るとずいぶん落ち着いて見える気がする。仕事のひとっぽくなる。自分の個体では電源関連でわかりにくいエラーがたまにあるところは少々心配になる。もっとも初代のボディには強く握るときしむのがいやだったので、それがなくなったところはいい。シャッター音や感触はα9やα7IIIなど上位機種や次の世代ではよくなっているので、世代ごとにきちんと改良されるところはいいよね。ただし、安くなったとはいえ10万円程度の価格がするカメラで背面モニターのコーティングが剥がれるところもどうかと思う。そして、操作することがおもしろいなどとちっとも思わせないカメラであるところが特徴なのかも。α7シリーズについてよく評される「『カメラ』というよりも『イメージキャプチャーデバイス』だ」という言い方はα7IIに関してはしごく納得できる。だから所有する喜びとか、趣味的なことを求めるならば、こういうレンズは富士のカメラやM型ライカに装着すべきだろう。パナソニックのGX7シリーズやGX8などのフラットデザイン機、あるいはオリンパスPENに装着するのも似合うね。

仕事道具として見るならばこのカメラはいいんだ。実用に徹した仕事道具という感じで、たんたんと撮影できるよさもある。仕事の撮影中には動作の感触や音に酔いしれている余裕はないから。なによりも荷物が小さくまとまるというのは仕事道具としては大きな利点だ。予備ボディもパッキングしやすい。予備電池もたくさん携行する必要があるからね。



数年前に、ロモグラフィーの復刻レンズを使うためにα7IIとVM-E Close Focus Adapterも使っていて、そのときもおもしろいとは思ったのに。いまのほうがもっとなにやら楽しい。それからさらに撮りたい絵柄が変化して、絞り開放でにじむような絵柄が楽しくなってきたというのが、我ながら興味深い。ちょっと前までは、こういう写りをうまくいかすことができなかったという自覚もある。私は撮影機材の選択にも、表現技法の選択にもある種の必然性を求めるのだ。数年前にもそう書いたことがあるけれどさ。

機が熟したのか、いいかげんになったのか。たんに、おっさんになって感傷的になったからかなあ。それでもまあいいや。えへへへへ。というわけで、このところ毎日α7IIとライカスクリューマウントレンズであれこれ試しているよ。私の所有しているレンズはほとんどが1本数千円で買ったというところも、じつはおもしろいんだよな。